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熊野大学

2014.08.22

夏というと「熊野大学」を思い出します。

今まだ「熊野大学」は続いているのだろうかと検索してみたところ、ちゃんとホームページがあるのですね。
そして今年もしっかりと開講されていることを知って嬉しく思いました。

「熊野大学」ホームページから抜粋します。


「熊野大学」は和歌山県新宮市出身の芥川賞作家・故中上健次氏によって1990年に設立されました。

「試験もない、校舎もない、校則もない」「だれでもいつでも入学でき、卒業は死ぬとき」という、そこに集うひとりひとりの志(こころざし)によって成り立つという全く尊い学校なのです。

中上氏は、氏の構想した「熊野学」の拠点とすべく「熊野大学」を設立されたのですが、惜しくも1992年夏46歳の若さで他界され、その後は氏の遺志を受け継いだ有志が中心となって活動を続けて現在に至っています。

毎年恒例の夏期特別セミナーは、渡部直己氏や高澤秀次氏にコーディネートいただき、 柄谷行人氏や浅田彰氏をはじめとする著名な評論家、作家、文化人等を ゲストに招いて開催されています。

(以上、ホームページより)


学生時代、この「熊野大学」に参加するためにどれだけ真夏の紀伊半島の新宮へ行きたかったことか。

そしてその数年後、中上の逝去の知らせを受けて、どれだけ悲しかったことか。

しかし中上健次の遺志は30年以上経った今も熊野の地でしっかりと受け継がれていました。

ちなみに今年8月8日~10日に開講された「熊野大学」は、同じく新宮が生んだ文学者「佐藤春夫没後50周年記念事業」と銘打って、「文学と女性性 ~佐藤春夫と中上健次をめぐって~」 というテーマで開催されました。

講師も以下の通り、そうそうたる面々です。(ホームページより抜粋)

大林宣彦、辻本雄一、松浦理英子、斎藤環、藤野可織、村田沙耶香、和賀正樹、中上紀、黒田征太郎(特別参加)、中村達也(特別参加)

上田から鉄道を使って最短でも約7時間の紀伊半島、新宮市。
遠いです。
でも、いつかまた中上健次の息吹をじかに感じるために、この地を訪問できる日を心待ちにしている自分がいます。

「美食の報酬」

2014.08.15

お盆前の怒涛の忙しさが一段落して、弊社は本日15日~17日までお休みを頂いております。
そんな静かな会社の事務所でこの文章を打っています。

このブログにもたびたび登場する私の友人、官能小説家の深志美由紀(みゆき・みゆき)がこのたび新刊を出しました。

「美食の報酬」(講談社文庫)。

数日前のアマゾンでは、何と売り上げが講談社文庫内でいきなり75位。
はっきり言って売れてます。

早速今日、上田の書店に買いに行きました。
が、置いてありませんでした。
近々東京へ行った折に書店で買い求めようと思います。

私は毎月かなり本は買うほうですが、基本的に本は今でもネットではなく書店で購入します。
これまでにネットで本を買ったのは数えるほどです。

思い出深いのは、学生時代に買って読んでは捨てを繰り返し、結局手元に残らなかった中上健次の「破壊せよとアイラーは言った」。
文庫ですが、探し続けてネットの古本屋さんでようやく見つけた時の嬉しさといったら。
定価の3倍ほどしましたが、それでも送料と併せて2,000円ほど。
安い買い物です。

私があえて書店で本を買う理由はふたつ。

ひとつは書店の空間が大好きだから。
たくさんの本に囲まれながら目的の1冊を探すひとときは至福の時間です。

そしてもうひとつは少しでも書店に儲けてもらいたいから。
古本リサイクルショップで本を買っても、作者に印税は1円も入らないそうです。
そしてネット社会で書店がどんどん駆逐されていく今、書店ひいては作家を守りたいのです。
カッコ良過ぎますかね。

さて、深志美由紀。

デビュー作で団鬼六優秀賞受賞作の「花鳥籠」は昨年秋映画化され、テレビではエンタメ~テレ「女の秘蜜 妄想ノススメ」でレギュラー出演し、本業の執筆でも脂が乗り切っている彼女。
新作ではどのような深志美由紀ワールドが展開されるのか、今から待ち遠しくて仕方ありません。

大長野酒祭り in 四ツ谷

2014.08.09

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今年で4回目を迎える「大長野酒祭り in 四ツ谷」。
8月3日(日)の猛暑の中、東京は四ツ谷エリアで盛大に開催されました。

今年は信州から45蔵、地元四ツ谷から22飲食店が参加。

振り返れば1年目、「日がさ雨がさ」「酒徒庵」「オール・ザット・ジャズ」の日本酒専門居酒屋3店舗のお声掛けで、17蔵が参加して始まったこのイベント、4年間でここまで成長したことは驚嘆に値します。
と同時に、主催者の皆様のご尽力にはただただ頭が下がるばかりです。

ルールは簡単です。

参加者はまず6,000円(当日6,500円)のチケットを買います。
あとは、各蔵元がブースを構える22の飲食店をフリーパスで回り、飲み放題、食べ放題。
12:30~17:30の間、真夏の四ツ谷で信州地酒を思う存分堪能して頂けるという仕組みです。

この日の参加者数は、用意したチケットが完売する1,000人強。
圧巻です。

そして当社がブースを出したのは、これまでの4回のうち3回目となる、我がホームともいえる「酒徒庵」。
こちらでは「真澄」の宮坂醸造さん、「豊賀」の高沢酒造さんと一緒に、3蔵での出展です。

12:30のスタートが告げられると、店内にどっとお客様が入場されます。

知った顔、初めての方、次から次へとお客様がブースに来られて、お酒を注ぎながら楽しい酒談義で花が咲きます。

お酒のビンがどんどん空になり、パンフレットが無くなっていき、名刺入れも薄くなっていく、そんな中で交わす皆様との会話がひたすら楽しくて仕方ありません。

そしてもうひとつ感無量だったのが、私の横でお手伝いして下さった方が、「和田龍登水」を見出して頂き、東京で発売されるきっかけを作って下さった大恩人Sさんであった事。

大勢のお客様、酒徒庵、大恩人Sさん・・・皆さんのおかげで、当社のような小さな蔵が東京のど真ん中でこのようなイベントに参加させて頂いている、その幸せを噛み締めます。

そしてあっという間の5時間。
イベント終了間際に、多くのお客様から「今日の締めはこの一杯にしたくて戻ってきたよ」というお言葉を頂き、また感涙・・・。

最後は店内中の「カンバイ!」の大発声で、今年の「大長野酒祭り」も無事お開きになりました。

ちなみに、前日四谷警察署にあいさつに出向いた酒徒庵の竹口店長によれば、担当の方が店長の顔を見るなり「今年もやるんですね」と言ったとか。
でもおかげ様で、酔い潰れて警察や救急車のお世話になる方は今年もゼロだったそうです。

「大長野酒まつり in 四ツ谷」、来年はまだまだ進化しそうな勢いです。

新丸ビルの夜

2014.08.02

日帰りで東京へ出張した夜、30年来の親友2人と飲みました。

私の帰りの新幹線を考慮してくれて、彼らが選んだ店が、東京駅直結の新丸の内ビル内にある「神田 新八」。
店名通り神田に本店がある居酒屋で、私は初訪問です。

品書きを見ると日本酒や焼酎にも相当なこだわりが感じられます。

銘柄を選ぶ際、スタッフの男性と話していて驚いたのは、このお店の「火入れ酒」のほとんどが24BYであるという事。

ちなみに「BY」とは「BREWERY YEAR」すなわち「酒造年度」の事で、その年の7月1日から翌年の6月31日を指します。
仕込みのある冬を中心としているわけですね。

つまり「24BY」とは、平成24年7月1日から平成25年6月30日の間に造られたお酒で、要は1年前のお酒です。

なぜ「火入れ酒」をあえて1年前の24BYで揃えているか、その理由を聞こうと思ったのですが、スタッフの方があまりに忙しそうで、つい聞きそびれてしまいました。
たぶん熟成や品質の安定を考慮に入れての事と思います。

また、ある銘柄の純米吟醸の熟成酒を「冷や」で頼んだのですが、ひと口飲んでこれは「ぬる燗」も合うと友人と意見が一致し、件のスタッフにお願いしたところ、我が意を得たりという顔で「まさにその通りなんです」と言って、同じお酒を絶妙な燗で持ってきてくれました。
旨い!

数年前、当社の「純米しぼりたて無濾過生原酒」を発売した直後、懇意にしている東京の地酒専門酒場の若旦那から「これはぬる燗もいけるよ」と言われ、「冷や」一辺倒でお勧めしていた私は目から鱗の思いだった事を思い出しました。

この「神田 新八」のスタッフも、お店のお酒に対するこだわりを決して押し付けるのではなく、会話の中でさり気なく提案してくれる事で、飲み手を身も心も気持ちよく酔わせてくれます。

そしてお造り、焼き物、出汁巻き・・・出てくる料理のおいしさといったら。
また1軒、素敵な店との出会いでした。

お店を出てから電車までのわずかな時間、友人の勧めで7階へ上がり、バーのカウンターでカクテルを買い求めて、それを持って屋外のテラスへ。

東京駅周辺の夜景をバックに、涼しくなった夏の夜風を浴びながら、束の間の時間を尽きぬ会話で過ごしたのでした。

真夏に日本酒

2014.07.26

久々の休日に妻と向かったのは軽井沢の星野リゾート。

この日は昼から「呑む」予定だったので、あえて車ではなく、しなの鉄道(旧信越本線)→中軽井沢駅からシャトルバスという手間の掛かる移動手段で、上田から約1時間で到着しました。

早速向かったのは、蕎麦屋で一杯という訳で、星野リゾート内のショッピングモール、ハルニレテラスの一角にある蕎麦処「川上庵」。
旧軽井沢銀座の入口に本店があり、東京にも何軒か支店を出している老舗です。

和テイスト漂うモダンな店内に腰を落ち着かせると、早速メニューをチェックし、鴨焼き、ニシンと茄子の焼き浸し、本にがりすくい豆腐、そして地元佐久の地酒を注文。

少しして届いた熱々の鴨焼きを頬張りながら、冷酒を喉にすーっと流し込む、そのうまさといったら。

それにしても店内を通り抜ける心地良い風は、今が真夏である事を忘れさせるほどの爽快感です。

次々にテーブルに届く酒肴を楽しみながら、お酒をおかわり。
お皿に添えられた塩や本山葵がこれまた美味しく、これだけでも十分にお酒のアテです。

締めは天せいろ。
蕎麦の風味や味わいはもちろんのこと、どーんと鎮座した2尾の海老の豪快な天ぷらまで、川上庵の真髄を存分に楽しみました。

ほろ酔い気分で午後はリゾート内を散策。
夏の午後を堪能しているうちに、いつの間にか広いベンチで大の字で爆睡・・・(ちなみにこのベンチは「仰向けになってお休み下さい」と書いてあります)。

夕方からは、やはりエリア内にある「村民食堂」。

ここでもまずは日本酒です。
メニューの中から自由に銘柄を選べる「3種飲み比べ」セットを注文。
そして「稚鮎の干物」「きのこと野菜のチーズ焼き」「豚肉と信州サーモンの粕味噌焼き」がこれまたお酒にぴったりで、「飲み比べセット」をおかわりをしているうちにメニューの地酒をすべて制覇していましました。
お酒と料理とそしてお店の空間にすっかり酔った我々でした。

帰りの中軽井沢駅での出来事です。

切符の自動販売機に何度お札を入れても戻ってきてしまいます。
振り返ると、いつの間にか順番待ちの長い行列。
これ以上後ろに迷惑を掛ける訳にはいかないとお札を入れるのを諦め、隣にある窓口に移動しました。

ぴたっと閉じられている小さな受取口の隙間から、中にいる中年の男性駅員に向かって声を掛けました。
「すみません。販売機でうまく切符が買えないのでこちらでお願いできますか」
そうしたら、覇気のない冷たい声でぼそっとたったひと言、
「ここは今やってないので販売機で買ってもらえますか」

驚きました。
百歩譲って何らかの事情で窓口では売る事ができなかったとしても、困っていると言っているのだから、それをフォローしようと思うのがサービス精神ではないのでしょうか。
例えば、買った時の状況を聞くとか、あるいは券売機を見に行くとか、客の立場を案ずる手段が何かあったのではと思います。

普段は上田駅をはじめしなの鉄道各駅で、笑顔とともに気持ちのいい接客に触れている身からすれば、その冷淡さが信じられない思いでした。

仕方なく券売機に戻ったら列は進んでいて、結局は私のボタンを押す手順が間違っていた事が分かりました。
ですから、これに関しては私が悪いです。

しかし、いつも快適な思いをしている地元の第三セクターで、不意打ちのように出会った冷たさに物申すと言って聞かない私を妻がなだめつつホームに向かった夕暮れ時の出来事でした。

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