記事一覧

「酒祭り夏祭り」

2010.07.13

ファイル 176-1.jpg

去る10日(土)、東京都内の日本酒専門居酒屋で「酒祭り夏祭り」と題した日本酒のイベントが行なわれ、私も参加して参りました。

きっかけは1本のメールでした。
この5月に本ブログにも掲載した「長野の酒メッセin東京」に初出展した際、弊社のブースに何度もお立ち寄り頂き、それ以降数多くのアドバイスを頂いている都内の地酒専門酒販店の番頭さんから連絡があり、よかったらぜひ参加してみないかとの事。
当日は他にも多くの蔵元が見えられるので、きっと勉強になるはずだからというお誘いに、考える間もなく出席のお返事を差し上げておりました。

そして当日。
まず向かったのは集合場所に指定されている、その番頭さんが勤める地酒専門酒販店。
ここにたくさんの高名な蔵元の皆さんが集まるかと思うと、お店に近づくごとに緊張が高まります。
でも入口をくぐって最初に目に入ったのが、同じ長野県の高沢酒造の高沢さんご夫妻、今ものすごく注目されている蔵元さんです。
知った顔に出会えた安心感もあって一気に気持ちもほぐれ、あとは次から次に見えられる蔵元さんと名刺交換をしながら時間を過ごしました。

そうこうしているうちに定時となり、番頭さんを先頭に会場の日本酒専門居酒屋へ移動します。
初めてお伺いするこのお店、実はこちらの若き店長さん以下スタッフの皆さんも、これまた「長野の酒メッセin東京」以来たくさんのエールと叱咤激励とを送って下さる方々なのです。

お店の入口には「当店は日本酒の専門店です。申し訳ございませんが、日本酒を飲まない方のご入場はご遠慮願います」から始まる長文のメッセージが貼り出されていて、お店の日本酒に対する熱い思いにまず感動。
そして入口をくぐると、店長さんをはじめ顔馴染みとなったスタッフの皆様が出迎えて下さって、またまた感動。
そんな中、会に先立って、まずは蔵元のみでの利き酒が始まりました。

テーブルというテーブルにはこの日訪問した全蔵元のお酒が所狭しと並んでいて、私も他の皆さんの例に漏れず、片っ端から栓を空けて試飲していきました。
それにしても感動したのは、一本の例外もなく、とにかくお酒が旨い事!
しかしその旨さのベクトルは全て違っていて、どのお酒も一本一本がしっかり造り手の思いを自己主張して、それぞれが異なる旨さなのです。
言い方を変えれば、今ここで改めてブラインドで試飲しても全部当てられる、そんな個性にどのお酒も満ち満ちているのです。
それは、どの蔵元も自分の目指す酒質の方向性をしっかり定めているからに他ならないからでしょう。

時間を惜しんで利き酒しているうちに少しずつ他のお客様も入られてきて、気が付けば店内は満席。
時計は午後5時、イベントの開始時間となりました。
各々があらかじめお店に指定された席に着いて、店長さんの乾杯の発声のもとパーティは始まりました。

4人掛けの私のテーブルには、新潟県の千代の光酒造さん、料理研究家の稲垣知子さん、そして偶然にも以前から交流がある「オレンジページ」のムック本の女性編集長が同席されました。
利き酒会で抜栓した一升瓶がそのまま各テーブルに振る舞われ、ひと通り飲み終わるとテーブルごとにその一升瓶を交換し合い、差しつ差されつしながら、我々のテーブルでも楽しい会話に花が咲きました。

千代の光さんからは醸造技術のあれこれを、料理研究家の稲垣さんからは日本酒と料理とのマリアージュをはじめとした「食」にまつわる知識を、そして旧知のオレンジページ編集長とは近況報告を含めた四方山話を伺いながら、楽しい時間は過ぎていきました。

そうこうしているうちに時計は午後9時。
とりあえず中締めという事で一度はその場を締めたものの皆さんなかなか席を立たず、かくいう私も楽しい会話を肴にさらに飲み続ける事しばし、重い腰をようやく上げたのは午後11時近くでした。

たくさんの仲間とたくさんのお酒とそしてたくさんの学びとに囲まれた今日の7時間を振り返り、駅までの道のりを心地良い余韻に浸りながらゆっくりと歩きました。
そして駅の切符売り場で少考し、今宵この余韻をもう少し楽しむために、私の足は宿泊先のホテルではなく、もう1軒次のお店へと向きを変えたのでした。

サービスの精神とは?

2010.07.06

週末を利用して、毎年恒例の社員旅行へ行って参りました。
社員旅行とは言っても、ほんの数名の勝手気ままな小旅行です。
今年の行き先は能登半島の和倉温泉周辺をチョイス。
今回はその時宿泊した旅館での出来事です。

ちなみにこの旅館はネットで調べて選びました。
そこそこの予算で評判の良い旅館を片っ端から検索し、名前の挙がった数軒のうちの1軒をその場でネット予約致しました。
もちろんこれはある意味賭けで、この選択が吉と出るか凶と出るか、わくわくしながらその日を待ちました。

さて当日、小雨がそぼ降る七尾市内を観光した我々は、午後4時頃その旅館に到着しました。
正面玄関に車を付けると、早速和服姿の係の女性が駆け寄ってきて、気持ちの良い挨拶を頂きます。
車を預けて中に入り、まずはチェックイン。
名前を告げると、担当の女性は前日に予約確認の電話を頂いた方だったのか、あらっ!という笑顔を頂きながら心地良い手続きが進みました。

旅館やホテルに宿泊する際、チェックインは最初に心躍るひとときです。
チェックインの時の印象の良し悪しによって、その旅館やホテルへの期待度も大いに変わって参ります。
そんな意味からも、今回の宿泊はスムーズかつ快適な流れの中で始まりました。

ささやかな事件が起こったのはその次でした。

受付のその女性と、もうひとりフロントの責任者らしい男性のふたりが、フロア奥の広々としたラウンジを示しながら「あちらでお茶をお出ししますね。その時に(リザベーションカードに)サインを頂きます」と言ったのを受けて、我々はラウンジ内の窓側のテーブル席に腰を落ち着けて、能登の海岸風景をしばし楽しんでいました。

余談ですが、山国に住む信州人の海に対する思い入れは、それはそれはハンパではありません。
乗り物に乗っていて海が見えた瞬間に「海だっ!!」と叫ぶのは当たり前。
電車に乗った信州人が、海が見えると全員が海側の座席に移動して電車が傾くという話もあながち冗談には聞こえないほど、長野県民にとって海は憧れなのです。

閑話休題。
さて、そんな訳で、我々一行もしばらくは海の眺めに見とれていたのですが、それにしてもお茶が出るどころか旅館のスタッフが来る気配すら一向にありません。
そうこうするうちにも、先着のお客さんは次々に客室係に案内されて部屋へ移動していくのを見て、ついにラウンジ内で立っている和服の女性に声を掛けました。
「待つように言われているのですがずっと待たされっ放しで、一体どうなっているのですか?」
怪訝な顔をしたその女性から返ってきた答えは「お待ち頂くようにという事でしたら、そのまま今しばらくお待ちください」というものでした。

それでも待てど暮らせど誰も来る気配がないのにシビレを切らした私は、フロントに折り返し、先ほど対応してくれたフロントのおふたりにちょっと語気を荒げて「ずっと待たされているのですが、どうなっているのでしょう?」と訪ねました。
その瞬間、おふたりの顔色がさっと変わり、「申し訳ございません!」というお詫びの言葉と共にカウンターから飛び出して来られました。
どうやら手違いで我々には引き継ぎが出来ていなかったようです。
素直に非を詫び再三再四頭を下げるおふたりの姿にすぐにわだかまりも溶け、私はひとまずテーブルに戻りました。

そんな私を追うように、係のふたりはテーブルまで飛んできて、再度のお詫びを繰り返します。
そしてこの短時間でいつの間に用意したのか、「よろしかったらお使いください」と、そのラウンジの無料のコーヒー券が人数分入った包みを手渡してくれたのです。
その言葉と態度には、フロントマンとしての気持ちと誠意がしっかりとこもっていました。

私は別にお詫びの品物が欲しかった訳ではもちろんありません。
ただ、クレームが付いた瞬間に何が起きたのかを察し、そして瞬時にこのような精一杯の対応を示してくれたのが、この旅館の姿勢そのものに触れたような気がして嬉しかったのです。

そのあと部屋まで案内してくれたのは、先ほどラウンジ内で曖昧な返答をした女性でした。
しかし彼女も、何が起きていたのかが分からなかった事を素直に認め、部屋に入ってから丁重に詫びの言葉を重ねました。
その事で我々の気持ちもより一層和み、彼女といろいろな会話が弾みました。

ところで、この旅館の食事のシステムがひと味違っていて、私はとても気に入りました。
そのシステムとは、食事処の営業時間内であれば、宿泊客は何時に足を運んでも構わないというもの。
通常は部屋に通されるのと同時に食事の時間を決めさせられ、その前後の時間まで拘束されてしまうのが常なのですが、こちらではいつ食事に行ってもいいというたったそれだけの事で、それ以外の時間も気持ちに余裕を持って過ごす事ができました。
加えて、日頃夕食の時間がかなり遅い私にとっては、多少遅く食事処に行っても許される、これは大変ありがたいシステムでした。

ちなみに、食事中に何気なく周りを見渡すと、先ほど部屋まで案内してくれた女性がせっせと給仕をしていて、目が会うと気持ちのよい笑顔と挨拶とを我々に向けてくれました。
その笑顔は決して義務感からでなく、真心のこもった暖かなものでした。
たったこれだけの事で、食事の時間がさらに楽しいひとときとなりました。

そして翌朝のチェックアウト。
応対をして下さったのは昨日と変わらぬおふたりでした。
ここで今一度おふたりから丁重なお詫びがありました。
そこで私は「温泉をはじめとして館内の施設といった「ハード」はもちろんですが、今回は皆様のサービス精神という「ソフト」を堪能させて頂きました」と返答致しました。

確かに最初は些細なミスから始まった今回の滞在でしたが、そこからの捲土重来を期したスタッフの皆様の態度と姿勢が、逆に大きな感動を感じさせて頂く結果となった、私も大いに学ばせて頂いた価値ある1泊でした。

更に驚いたのは、チェックアウトを終え、車に向かう私たちを見送って下さった(たぶん)女将からも「今回は大変な失礼をしてしまいまして本当に申し訳ございませんでした」という言葉を頂いたこと。
よく「ほう・れん・そう」、即ち「報告・連絡・相談」という、企業として欠かす事のできない三要素が挙げられますが、この点においてもこの旅館はそれが徹底されていると、改めて感心した次第です。
そんな女将の言葉に、私も「次にご縁があったその時はぜひまた宜しくお願い致します」と感謝の言葉を述べて旅館をあとにしたのでした。

この旅館は、和倉温泉「ゆけむりの宿 美湾荘」といいます。

「神田 木花」オープン

2010.07.01

ファイル 174-1.jpgファイル 174-2.jpg

写真上:「神田 木花」入口
写真下:オープン直後、栄えある第1号の客として撮影した店内。
    ちなみにテーブル席や個室もあります。


このブログで2008年9月9日に登場した、東京は代々木上原にある和Cafe&和Dining「木花(このはな)」。
その姉妹店として、このたび「炭火割烹 神田 木花」がオープン致しました。

「木花」代々木上原店はオープンして以来、私自身も大のお気に入りの1軒として足繁く通うこと数知れず。
ほっと安らぐ暖かな空間と月山料理長の洗練された料理とで、その都度満足のいく時間を過ごさせて頂いております。

そして今回オープンした「炭火割烹 神田 木花」、こちらは一体どのようなお店に仕上がったのか、興味津々のまま、オープン当日にお祝いも兼ねてお伺いしました。

夕刻、神田駅西口を出て住所を頼りに探す事しばし。
徒歩数分の大通りに面した角の場所に、すぐに「木花」の看板を見つけました。
しかし若干早めに到着してしまった事もあり、せっかくだからとお店の外観を撮影しているとタイミングよく入口の扉が開き、オーナーの若松さんが開店準備のため和服姿で出ていらっしゃいました。
「女将!」と声を掛けると、驚いて振り向いた若松さんの顔はすぐに満面の笑みに変わり、こちらからの「おめでとうございます!」という言葉と共にしばし談笑。
それにしても不景気が叫ばれるこの時期に、あえて新店舗を出した女将の勇気と英断にはただただ頭が下がります。

そしていよいよオープン。
親友とふたりで入店した私たちは、栄えあるオープン第1号の客として迎え入れられました。
厨房を見ると、普段は代々木上原店を任されている月山調理長の姿も見えて、改めて今日この日に賭けるお店の意気込みが伺えます。

早速メニューを見ながら、せっかくなのでコース料理を注文しようとした私たちに、「サービスの係を慣れさせたい意味もあって、もし良かったら単品でご注文して頂けるとありがたいです」という女将の言葉。
そういう事であればと改めてメニューを見つめ直し、目に付いた料理を片っ端から注文、お店の今後のためにオペレーションの不確かなところはあえて指摘もさせて頂きました。

それにしても、メニューにずらりと並んだ数々の料理の、そのコストパフォーマンスの素晴らしさは、代々木上原店の精神をしっかりと受け継いでいます。
魚や肉などのメインの料理はもちろんですが、さり気ない突き出しの一品まで実はしっかりと仕事が成されていて、その完成度には改めて思わず感嘆の声が出てしまいます。
この日もあっという間に全ての料理を完食して、楽しい宴の時間はお開きとなりました。
見渡すと広い店内はいつの間にか満席、その盛況ぶりに私まで嬉しくなってしまいました。

ちなみに「神田 木花」、ランチでは富士吉田うどんを提供しています。
メニューには「つけめん」「カレーつけめん」「肉うどん」「生醤油温玉おろしうどん」などが並びます。
私も後日、ランチタイムにお伺いして「かき揚げうどん」を食べたのですが、その太く、もっちりシコシコしたコシと味わいに感動、あっという間に食べ尽くしてしまいました。
小皿に添えられた七味唐辛子がこれまたおいしい。
一食の価値ありです。

代々木上原店同様、神田にお越しの歳はぜひ一度「神田 木花」に立ち寄ってみて下さい。

「炭火割烹 神田 木花」
千代田区内神田3-5-3 矢萩第2ビル1階
営業時間:月~金 11:00~15:00 17:00~23:00
土   11:00~16:00 17:00~21:00
定休日 :日祝
電話番号:03-3254-4533

 

祝!「リビアーモ」10周年

2010.06.22

ファイル 173-1.jpgファイル 173-2.jpg

写真上:リビアーモ店内
写真下:この日のひと皿


上田市の夜の繁華街の一角にある「Restaurant Bar Libiamo(レストランバー・リビアーモ)」。
私も大好きなこのお店が10周年を迎え、このたび4日間に渡って記念パーティが行なわれました。

4日間に渡って、というのは、お店の小ささもさる事ながら、「リビアーモ」に惚れ込み、そしてオーナーソムリエの坂田英昭氏を慕って通う大切なお客様を、とても1日ではご招待し切れなかったから。
ちなみに私は初日にお招き頂いたのですが、いつものように彼のおもてなしの気持ちが行き届いた、心地良くそして快適な時間を過ごすことができました。

坂田氏が「リビアーモ」をオープンさせたのは20代半ばの若さ。
そして坂田氏と私との縁は、彼が修行をしていた前のレストランにたまたま私が食事に行った事がきっかけでした。
彼はたった一度会った私の顔を覚えていてくれて、偶然にもオープン当日「リビアーモ」の前を通り掛った私を呼び止め、「今日オープンなんですよ!」と声を掛けてくれた事が、私がこのお店に足繁く通う事になる始まりでした。

このお店の魅力は、何よりもまずおいしいお酒と料理のラインナップ。
厳選されたワインやウイスキーをはじめとするボトルの数々、そして彼の手による卓越したカクテル、さらには生ビールの一杯でさえ、そのこだわりと美味しさにいつも思わず唸ってしまいます。
そして日替わりの料理のメニューも、突き出しから始まってすべてが坂田氏の手作り。
パーティ初日のこの日も、彼の心のこもったひと皿「和牛フィレ肉のサマートリュフソース」(写真下)が振る舞われました。

写真では見づらいのですが、ベリーレアに焼かれた肉の下には丁寧に裏漉(ご)しされたマッシュポテトが敷かれていて、その滑らかなおいしさといったら。
こういう「刺身のツマ」的な存在にも決して手を抜かないのが坂田氏の真骨頂。
最後はソースの一滴までパンで掬い上げ、彼の会心の料理を存分に堪能しました。

そしてこのお店のもうひとつの魅力である、心和む暖かな店内の空気。
この日もピアノとヴァイオリンの生演奏をBGMに、このお店で知り合った仲間同士が打ち解け、語り合い、そしてリビアーモの10年の歴史にお互いが酔いしれました。
かくいう私も、これまでこのお店で何人の方と出会った事か。
それはこのお店が醸し出す空気が、お酒だけでなく人との出会いまで演出する雰囲気を併せ持っているからでしょう。

パーティは坂田氏の勧めるシャンパン、ワイン、そして料理と共に進み、さらには各々が好きなものをオーダー。
かくいう私も今日のこの日を楽しむべく、珍しく葉巻をお願いし、ゆっくりと火を着けているところに「シガーと一緒に楽しんでね」と、貴腐ワインと私が大好きなマッカランが彼の手により届けられます。
連れの親友は「何かカクテルを」とお願いしたところ、坂田氏の十八番「ギムレット」が運ばれ、それからもしばし楽しい時間はエンドレスで流れていったのでした。

そして今日もまた、繁華街で飲んだくれた私は、その日の締めの一杯を求めて「リビアーモ」のカウンターの片隅に腰掛けている事でしょう。
坂田氏、そして「リビアーモ」、10周年本当におめでとう!

三遊亭鬼丸誕生

2010.06.16

ファイル 172-1.jpg

上田市出身の落語家、三遊亭きん歌がこの秋真打に昇進し、晴れて三遊亭鬼丸(おにまる)を名乗ることになりました。

師匠は落語協会会長の三遊亭圓歌。
二つ目昇進と同時に「きん歌」に改名してから苦節10年、その二つ目離れした話芸に私も魅了されていたひとりなので、この日を今か今かと待っておりました。

ちなみにきん歌と私との個人的な出会いは数年前。
それまでもきん歌は、折に触れ故郷の上田で落語を披露したり地元メディアに登場したりしていたのでよく知っていたのですが、ある日そんな彼から連絡があり、ちょっと相談があるとの事で我が社を訪ねてきてくれました。

しばし四方山話で盛り上がったあと、きん歌曰く、今度自分が高座を務める落語会で趣向を凝らしたい、ついては協力してはもらえないだろうか、との事。
その頃から寄席通いが大好きだった私は一も二もなく快諾し、早速ふたりで打ち合わせに入りました。
その趣向とは、次の落語会で「禁酒番屋」というネタを披露した際に、お客様に独自のラベルを貼ったお酒を配りたいというものでした。

「禁酒番屋」、簡単に説明します。
家中の席で酒による殺傷事件が起こった事から藩士一同に禁酒令が発せられ、酒の持ち込みを禁じるための禁酒番屋なるものが設けられました。
そんな中、大酒飲みの藩士近藤は大胆にも酒を持ってくるように酒屋に命じ、それを受けた酒屋はあの手この手で禁酒番屋を突破すべく策を講じます。
まず最初に考えたのが、酒をカステラと偽って持ち込む方法。
しかしカステラを重そうに運ぶ仕草でバレそうになり「これは水カステラというもので」と必死に誤魔化そうとするも・・・。

そんな噺になぞらえて、きん歌のアイディアで用意した一合徳利のラベルは、ズバリ「水カステラ」。
そしてビンの裏側には「但し、御門をお通りの際はお気を付けて下さい」。
ユーモアとウイットに富んだこのお酒は、落語会の帰りにお客様に配られました。

そんなきん歌との邂逅があって月日が経ち、そして迎えた先月。
彼が支援者の方々と一緒に、待ちに待った真打昇進の挨拶にやってきました。
ようやくこの日が来たかという嬉しさが胸に込み上げ、気が付けば私も心の底から何度も何度も「おめでとう!」の言葉を繰り返しておりました。

その直後、上田市内の宴会場で「真打に昇進するきん歌を応援してやろう会」が開催され、予想を遥かに上回る200名が会場に駆け付け、会場は蒸せ返るような熱気に包まれました。
(写真は、その場で挨拶するきん歌)

そして8月には東京で「三遊亭鬼丸真打昇進披露の宴」が開かれ、9月から10月に掛けて都内4つの寄席で40日に渡り真打披露興行が行なわれます。

私も早く彼を「師匠!」と呼べる日を、そして真打披露興行では「待ってました!」の掛け声を掛けられる日を、そして彼との話の中でも出た「芝浜」をはじめ三遊亭鬼丸の大ネタを聴く事ができる日を、今から首を長くして待っています。

鬼丸、頑張れ!

ページ移動