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マリコビンヤード

2011.09.12

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「シャトーメルシャン・マリコビンヤード・シャルドネ2010」を飲みました。

このワインは、私の地元、上田市丸子地区の自主管理畑「マリコヴィンヤード」で獲れたシャルドネが100%使われています。
写真のラベルにもある「椀子(まりこ)」の名前は、丸子地区の古代名から取られています。
2003年から収穫が開始されたこの畑、シャルドネの他にもシラー、ソーヴィニヨンブランが栽培されていて、毎年高品質なぶどうが収穫されています。

昨夜はアサリを蒸したものと、鶏肉に小麦粉をまぶして炒めたものとを合わせたのですが、どちらもシャルドネのキレのある酸とふくよかなボディとにきれいにマッチし、そのマリアージュを堪能しました。

ちなみに今、信州産のワインが注目を浴びています。
そして上田市がある長野県の東信地方にも様々なワイナリーがオープンしています。
特に上田市の隣の東御(とうみ)市はワイン特区に認定され、玉村豊男さんの「ヴィラデストワイナリー」をはじめとして、「Rue de Vin(リュードヴァン)」「はすみふぁーむ」等々、力のあるワイナリーが次々と誕生しています。

日本酒とワインの違いはありますが、同じ信州の醸造酒が地元のみならず全国で注目されるのは大変嬉しい事ですし、また大いに励みにもなります。

ひやおろし発売開始

2011.09.08

お待たせしました!
「登水(とすい)ひやおろし」、いよいよ9月9日から発売開始です(詳細はトップページのトピックスをご覧下さい)。

ちなみに長野県では「重陽の節句」にちなんで9月9日が「ひやおろし」の一斉解禁日となっています。

今年は春先に搾った「登水」を、「ひやおろし」の分だけあえて常温で貯蔵し、ひと夏越えた今、まろやかで円熟の味わいに仕上がっています。

昨年の「ひやおろし」は発売から3週間で完売してしまい、皆様に大変ご迷惑をお掛けしましたので、今年は約倍の量をご用意しております。

これから11月にかけて秋の味覚もどんどん登場して参ります。
山の幸、海の幸と併せて、「登水ひやおろし」ぜひご賞味下さい。

「花鳥籠」

2011.08.31

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私の友人の女性がこのたび小説で賞を取り、その作品がめでたく出版されました。
第1回団鬼六賞優秀賞受賞作、深志美由紀(みゆき・みゆき)著「花鳥籠」(悦の森文庫)。
「団鬼六」の名前でお分かりの通り、これは官能小説に与えられる賞です。
この作品も、普通の主婦がネットを通じて知り合った男性と破滅的な恋愛に溺れていくさまを、匂い立つような濃密な筆致でぐいぐい描き込んでいます。

ちなみに団鬼六、SM小説家としてのみ認知されてる方も多いかと思いますが、そんな方は一度、氏の晩年の傑作「真剣師小池重明」(幻冬社アウトロー文庫)をお読みください。
実在した賭け将棋の真剣師小池重明の破天荒な生涯を描いたこの作品は、団鬼六の描く世界の凄さと小説の深みとを存分に感じて頂ける事と思います。

そんな団鬼六を冠した賞の第1号を彼女が受賞したことを知った時は驚きと感動とでいっぱいでした。
「花鳥籠」、ご一読頂ければ嬉しいです(買いづらいという方はネットでどうぞ)。

「それゆけ!!大長野酒祭り!!」

2011.08.26

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写真上:酒祭り開催中の店内
写真下:酒祭り終了時の「乾杯!」


先週の土曜日、東京は四谷三丁目の地酒専門酒場「酒徒庵」「日がさ雨がさ」「オール・ザット・ジャズ」3店のコラボによる「それ行け!!大長野酒祭り!!」が開催され、私もお酒を振る舞って参りました。

当日は長野県から16の蔵元が参加。
加えて県内のほぼ全蔵のお酒が各店にずらりと並びました。
さらには「おやき」や「信州味噌」をはじめ長野名物のつまみがテーブルを彩り、そんな中でお客様は3店を自由に出入りし、蔵元と話に花を咲かせながら長野の地酒を存分にご堪能頂きました。

ちなみに私が担当させて頂いたお店は「酒徒庵」。
お酒のお取り扱いも頂いておりますが、ひとりの飲ん兵衛としても大好きなお店で、お目当ての地酒と牡蠣と干物を求めて客の立場でお伺いすることもたびたびです。

そんな「酒徒庵」で、次々とご来店されるお客様にお酒をお注ぎしながら、おひとりおひとりとじっくり酒談義で盛り上がること5時間。
気が付くとあっという間に閉店の時間を迎えておりました。
最後は店長の竹口さんのご発声で全員で乾杯!
真夏の熱気に包まれたイベントは無事お開きとなりました。

そのあと、3店の関係者と参加蔵元が一同に会して打ち上げ。
ずらりと並んだ銘酒と酒肴に我々も舌鼓を打ちながら、まだまだ熱気が続く四谷三丁目の夜は更けていったのでした。

ゆうぜんとしてほろ酔へば

2011.08.19

「ゆうぜんとして ほろ酔へば 雑草そよぐ」
種田山頭火の俳句です。

この句と共に愛くるしいふくろうが描かれた秋山巌の版画が、我が家に飾られています。
この版画は私が20代後半の頃、つまり今から20年ほど前に、北九州市のひらしま酒店店主、平嶋雄三郎さん(2008年ご逝去)を訪問した際、平嶋さんご本人にご手配頂いて手に入れたものです。

ひらしま酒店、そして平嶋雄三郎さんの名前を知る日本酒愛好家は多いかと思います。
全国の地酒専門店の先駆けとしてその名をとどろかせ、銘酒を求めて国内を行脚し、そして北九州の地から全国へ向けて日本酒の魅力を発信していました。

今から20年前、そんな平嶋さんに会いにいこうと誘って下さったのは、今も公私に渡ってお世話になっている長野市の「酒のかすが」店主の春日康男さん(当ブログ2007.11.27掲載)でした。

まだうだるような暑さが残る初秋、長野から在来線と新幹線を乗り継ぎ、小倉の駅に着いたのはその日の午後でした。
初めてお目に掛かった平嶋さんを前に、あわよくば取り引きにまで漕ぎ着けられればと思っていた私は、そんな自分の甘さを完膚なまでに叩きのめされることになります。

話をする中で、私自身の日本酒に対する取り組みから、持参したお酒の品質のみならずネーミングに至るまで、平嶋さんは厳しい口調で私の甘さを叱咤し、最後には「よく君みたいな者が私のところへ来たね」とまで言われました。
それは私がこの業界に入って初めて味わう大きな挫折でもありました。

でもそれは平嶋さんの愛情の裏返しでもありました。
その晩、ご自宅の客室に泊めて頂いた春日さんと私は、平嶋さんに連れられて北九州の繁華街を何軒もハシゴし、そこで平嶋さんが扱っている地酒を文字通り片っ端から飲みながら、たくさんの薫陶を受けたのでした。

ちなみに我々が泊めて頂いた平嶋さんの客室には、それまでに訪問された皆さんがひとことを綴った雑記帳が置かれていました。
ページをめくると、そこにはそれこそ全国津々浦々の蔵元から始まって、平嶋さんが資料を提供した「夏子の酒」の作者尾瀬あきらさんに至るまで、当時の私にとっては雲の上のような存在の方々が名を連ねていました。
尻込みする私を前に、君も何か書きなさいと言われ、震えながら記したひとことは今も忘れません(恥ずかしいので内緒ですが)。

帰りの新幹線で、その頃はまだあった食堂車で頼んだカレーが、この2日間で受けた衝撃のために喉を通らなかったのもいい思い出です。

その後も折に触れ、勇気を出してお電話を差し上げては厳しくも愛情溢れるお言葉を頂いた平嶋さんは、3年前突然ご逝去させました。
今でも自宅に飾られた「ゆうぜんとしてほろ酔えば・・・」の額を見るたびに、あの頃の平嶋さんのお姿と教えとを思い出すのです。

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