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誠意ある回答

2017.10.07

しばらく前の出来事です。

懇意にしている関東の酒販店さんから、今日届くはずのお酒が届いていないとの連絡がありました。
すぐさま業者へ連絡をして調べてもらったところ、中継地点の長野市で積み忘れたとの事。

普通でしたらここで怒るところですが、そうしなかったのは対応した係の方の姿勢が素晴らしかったからです。

ちなみに時刻は夕方5時過ぎ。
そのWさん(私と同じ名字です)は、まずはお詫びを述べたあと、何か対策を考えますと言って一度電話を切りました。

せいぜい「明日できるだけ早くお届けします」と答えるのが精一杯だろうと思っていた私は、すぐに掛かってきたWさんの回答に驚きます。

「これから新幹線に乗せてお酒をお届けします」

その気持ちだけで十分と思った私は、ご迷惑を掛けた先方にこの経緯を伝えご了解を頂いた上で、明日先方の希望時間通りの到着をお願いしました。
ついでに、お酒の品質保持のため常温をチルドに変えてもらえないか頼んだところ、Wさんはどちらも快諾してくれて、実際その時間ぴったりにお酒は冷蔵で届いたそうです。

この件を思い出したのは、今日、あの日以来となるWさんと話をしたから。
とある件をお願いした私に対して「きちんと調べてお返事します」と答えてくれたWさんの言葉には、今回も誠意がしっかり感じられました。

1杯のスパークリング

2017.09.30

しばらく前に妻と一緒に初めて訪れたレストラン。
午後7時を回った店内は8割近くの入りで、心地よい喧騒に包まれていました。

我々もメニューをじっくりと眺めながら、秋の食材をふんだんに使ったコースと、シャンパン(「ペリエ・ジュエ」)をボトルで頼みました。

最初の驚きは、若いソムリエがシャンパン用のフルートグラスではなくボルドーの赤ワイン用の丸型グラスを持ってきたこと。

「このシャンパンは時間の経過とともに素晴らしい香りと味わいが立ってきます。それを存分に味わって頂こうと思いまして、よろしかったらこちらのグラスでお召し上がりになりませんか?」
我々が喜んで彼の提案に乗ったのは言うまでもありません。

さて、食事も進み、店内もちらほらとお客様が帰り始めた頃、妻があることに気が付きました。
我々のテーブルだけ、他のどのテーブルにも飾ってある花とキャンドルがないのです。

たぶん予約を入れたのが30分前だったので、急に誂(あつら)えた席だったのでしょう。
たったそれだけの事と言われればそれまでですが、いざ気が付いてしまうと、我々のテーブルだけが殺風景に見えてきて仕方ありません。

妻は「そんな小さな事、わざわざ言わなくていいから」と止めますが、私はシャンパンにボルドーグラスを勧めてくれたソムリエのホスピタリティを信じて、あえて指摘してみる事にしました。

「気を悪くされないで聞いてください。我々のテーブルだけ花とキャンドルがないのです。これはちょっと寂しい気がします」
それに気が付いた時のソムリエの驚き。
彼のお詫びの言葉が決して表面上でない事は、その姿勢から十分に伝わってきました。

その後もソムリエやサービスの皆さんと楽しい会話を交わしながら食事も一段落し、最後の客となった我々が席を立とうとした時です。

そのソムリエが1本のワインのボトルを抱えてきました。
「これは私からです。私がお気に入りのオーストラリアのスパークリングです。せっかくなのでフルートグラスとボルドーグラス、両方のグラスでお楽しみください」
そう言って、妻と私にグラス違いで2杯ずつ、ワインを注いでくれたのです。

たぶんいろいろな意味があったのでしょう。
もちろん花とキャンドルのお詫び。
それ以外にも、初訪問の我々が料理に大いに感動したこと。
お酒の話をはじめ、いろいろな話題で彼と随分と盛り上がったこと。

いずれにしても、初めての客に対して彼が注いでくれたそのスパークリングは、私と妻の心を射止めるには十分過ぎる1杯でした。

決して出過ぎず出しゃばらず、しかし確実に心のこもった彼のさり気ないサービスで、我々は再訪を期したのでした。

「枯木灘」

2017.09.23

もう何度目になるのか数え切れない中上健次の「枯木灘」を読了しました。

圧倒的な筆致。
むせ返るような濃密な文章。

30歳を越えたばかりでこのような小説を書き上げた中上の才能には、読み返すたびにただただ感嘆するしかありません。

被差別部落を「路地」と呼ぶ、その呼び方も中上によって完全に定着しました。

そんな紀伊半島新宮市の「路地」で生まれ、極めて複雑な家系のもとで育った中上の出自そのものを描いた「岬」「枯木灘」「血の果て至上の時」の3部作は、中上が作品に込めた思いを受け止める覚悟を持って対峙しないと読み進めない迫力に満ち満ちています。

ちなみに「枯木灘」を含む3部作の複雑な家族関係は、文庫版「枯木灘」にのみ載っている家系図を何度も開かないと理解できないほどです。
私はコピーを取って他の作品のページの間にも挟んでいます。

中上が生まれ育ち、数々の小説の舞台となった新宮を2度訪れました。
中上原作で映画にもなった新宮の「火まつり」にも行きました。

高校時代たまたま読んだ中上健次の虜となり、今なお中上の作品を取り出して読むたびに、その文章と筆致にひたすら魅せられる毎回です。

機種変更の悩み

2017.09.16

もう何年使っているか分からない携帯電話。

機種はNTT docomoのELUGA。
これをまだ使っている人って、どれくらいいるのでしょう?

しばらく前に電池パックを交換したのに、フル充電しても1日どころか、使い続けると下手すれば半日持たないと言うと大概の方が驚きます。
なので充電器は手放せないし、すべての席にコンセントが付いている北陸新幹線の中では常に充電中。

しかもインターネットにアクセスしようとしても異様に遅い。
たまに妻の携帯電話を使わせてもらうと、そのアクセスの速さに驚くばかりです(それが普通なんでしょうけど)。

だったらすぐに機種変更すればいいじゃん、と言われそうですが、OA機器関連に疎い私にはそれがなかなかできない決定的な要因が。

それはLINEの引き継ぎ。

以前、近所のNTT docomoに行った際に、機種変更したら過去のLINEの履歴を乗せ換えてもらえるか聞いたら「これは当社のアプリではありませんので出来ません」と、何ともつれない返事。

ネットで調べると方法はたくさん載っているのですが、どれも難しそうで、読んでいる途中でギブアップです。

誰かやって頂ける方、いませんか?

「人と人を繋ぐそば会 in 上田」

2017.09.09

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3枚目:左から塙さん・福崎さん・私(閉会後だったので、若林さんは電車の時間があり残念ながら帰られました。)


「人と人を繋ぐそば会 in 上田」が上田市内の蕎麦店「くろつぼ」さんで開催されました。

主催は

・山形村「木鶏(もっけい)」店主 塙 (はなわ) 和貴さん
・上田市「くろつぼ」店主 福崎 直人さん

どちらも今をときめく蕎麦の名店です。

そこに千曲市の地酒専門店、生坂屋商店の若林 数矢さんプロデュースのもと、ありがたい事に当社のお酒が振る舞われる事になりました。

限定20名で募った参加枠はあっという間に満席。

そして当日驚いたのは、県外から来られたお客様の多いこと。
群馬・東京・京都・・・皆さん、おふたりの蕎麦に惚れてわざわざのご来訪です。

お料理はこの日のために贅を尽くしたひと品ひと品で、松茸の初物や、長野県南信地方特産の巨大な「鈴ケ沢なす」といった特産品も登場。
そして締めは2店の店主が腕によりをかけて作った蕎麦4種。

そのお料理や蕎麦に、「和田龍登水(とすい)」をはじめとする5種類揃えたお酒を合わせて頂く幸せ。

いつの間にか知らぬ者通しの垣根も取れて、文字通り「人と人を繋ぐそば会」の夜は更けていったのでした。

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