上田市の隣に位置する東御(とうみ)市。
そのほぼ中心街、しなの鉄道田中駅から車で5分程、長野県にネットワークを張るスーパー「マツヤ」内にあるのが「酒乃うちやま」さんです。
実はご主人の内山さんと出会ったのは昨年の秋。
初めてお目にかかって、内山さんのお酒に対する思いや情熱を伺っているうちに、この方ともっともっとお知り合いになりたいと思ったのでした。
スーパー内の店舗でありながら、日本酒の素晴らしさを伝えるために外への営業にも積極的に足を運ばれ、飛び込みも辞さず、地元や上田の業務店を中心に着々とファンを増やされています。
実は昨夜も共通の友人を加えて3人で痛飲、日本酒を巡る数多の話で花が咲いたのでした。
内山さん、これからもどんどんお酒の魅力をお客様に発信していって下さい。
記事一覧
「酒乃うちやま」さん
日本酒度とは?
お酒の甘い辛いを判断する時、まずは日本酒度を見ますよね。
では、日本酒度とはそもそも何でしょう?
日本酒度とは、水に対するお酒の比重を表わす単位です。
清酒中の糖分が多くなるほど比重は大きくなり(日本酒度は-の値となる)、逆に糖分が少なくなれば比重も小さくなります(日本酒度は+の値となる)。
糖分の多い少ないによって数値が決まってくるので、日本酒度は甘辛の判断となるというわけです。
ここで大切なのは「アルコール発酵」の原理です。
アルコール発酵とは「糖分(ブドウ糖)が酵母によってアルコールと炭酸ガスに分解される」ことをいいます。
すなわち、アルコール発酵が進むほど糖分は減って、その分アルコールが生成されます。
そしてアルコールは水よりも比重が小さいです。
よって例えば、糖分が少なくなる→アルコールが多くなる→水との比重は小さくなる→日本酒度は+の数値で大きくなる、という関係となるのです。
具体的には、15℃に温度を設定した清酒に「日本酒度計」という専用の浮ひょうを浮かべ、その数値を測定します。
ここで気を付けなければならないのは、「日本酒度」とは上記の通り、あくまでも糖度に関する値であり、同じ日本酒度の清酒でも、そこに「酸」あるいは旨み成分の「アミノ酸」といった要素が入ってくると、そのバランスによって味わいはがらりと変わってくるということです。
最終的に大切なのは、やはり自分の舌による官能判断ということですね。
当蔵もようやく。
先日の続き。
というわけで、当蔵も今年度の「純米しぼりたて生原酒」、季節限定で発売を開始しました。
精米歩合:70%
アルコール分:18.2
日本酒度:+4
酸 度:1.8
アミノ酸:1.4
純米酒特有のふくよかな柔らかさと、新酒ならではの荒々しいフレッシュさとが絶妙な調和を見せています。
ちなみに活性炭ろ過はしていません。
今の時期なら鍋料理に合わせると、具材が肉でも魚でも、出汁の力強さとあいまって、お酒がどんどん進むこと請け負います。
お値段は4合びんが1260円、一升瓶が2520円です。
「生」って?
酒造りが真っ盛りのこの時期の旬のお酒として、各蔵からしぼりたての生酒が発売されています。
ではこの「生酒」とはどういうお酒なのでしょう?
その名の通り、「生酒」とは一切加熱処理していないお酒のことです。
「生酒」の香りは、青竹のような、あるいは沢の流れのような、みずみずしい独特のものなので、慣れればすぐに分かります。
では「生酒」ではないお酒とは?
通常のお酒は、60~65℃以上で2度加熱(=「火入れ」といいます)を行います。
一度目はお酒をしぼったあと、二度目は瓶詰めする時です。
「火入れ」をする理由は2つ、ひとつは殺菌のため、もうひとつはお酒の中に残っている酵素を破壊するためです。
ひとつめの殺菌については、「火落ち菌」という、繁殖すると白濁して品質を著しく劣化させる菌を除去させる目的です。アルコール耐性を持つ菌なので、加熱による除去が必要なのです。
また、ふたつめの酵素の破壊については、酵素が残存していると清酒中での化学反応を促進させるので、それを防ぐのが目的です。
「火入れ」をしたあとは速やかに急冷します。
お酒の温度が高ければ高いほど各種の化学反応の速度も早まるため、変質や過熟を避けるためにはすぐに温度を下げなければならないのです。
ちなみに、通常2回行なわれる「火入れ」、これが1回だけだと呼び方が変わってきます。
しぼったあと「火入れ」をして貯蔵し、びん詰め時には「火入れ」を行なわないものを「生詰め」と呼びます。
秋に発売される「ひやおろし」は、一般的にこの「生詰め」状態で出荷されます。
一方、しぼったあと「火入れ」せず貯蔵し、ビン詰め時だけ「火入れ」を行なうものを「生貯蔵酒」といいます。
「生貯蔵酒」にすることで、常温での保存・流通が可能になります。
「生酒」の風味を半分残し、貯蔵時の品質の安定度も半分以上アップするといったところでしょうか。
秘湯の名宿
上田市に隣接する青木村、その山間に位置する田沢温泉の一角に「ますや旅館」はあります。
ご覧の通り木造三階建ての建物は、しばらく前に国の登録有形文化財に指定されました。
島崎藤村が好んで逗留した事で知られ、「千曲川のスケッチ」では実名で登場し、その部屋は「藤村の間」として今でも使われています。
源泉100%掛け流しの温泉は程よいぬるさで、長時間浸かっていても飽きることはありません。
そして、特筆すべきは料理。
若社長自ら厨房に立って作られる料理はすべて地のもの。
近隣で採れる季節感溢れる山菜の数々、秋は松茸をはじめとするきのこ尽くし、そして鮎や鯉をはじめとする川魚あれこれ、あるいは馬や鹿といった野生の肉、これらが和のテイストだけでなく洋のテクニックも駆使されて目の前に並びます。
近くの川のせせらぎを聞きながらこれらの料理を楽しむひとときは堪えられません。