記事一覧

龍勢祭

2008.10.02

ファイル 85-1.jpg

10月第二日曜日に当たる12日、今年も埼玉県旧秩父郡吉田町(現秩父市)で、「龍勢(りゅうせい)祭」が開催されます。
このお祭りは地元の椋(むく)神社の例大祭に奉納する神事して行なわれます。

「龍勢祭」の特徴をひとことでお伝えすると、27の流派が伝統の製法に則って作り上げた、松の筒に火薬を詰めたロケットを、15分に一発ずつ点火して空に打ち上げるという壮大なものです。
ロケットが煙とともに空に飛んでいく様子がまるで「龍」のようである事から、「龍勢」と名付けられました。

ゴーッという凄まじい轟音を伴なって打ち上がったロケット「龍勢」が上空まで達すると、松の筒に仕込まれたパラシュートが開いて優雅に落下し、そこで会場を埋め尽くした数万人の観客からは大きな歓声と拍手とが送られます。
しかしすべての龍勢がそのように綺麗に成功するとは限らず、中には山の中腹に建てられた発射台で点火した直後、あるいは打ち上がっている最中に惜しくも爆発してしまう龍勢も少なくなく、だからこそ見事に打ち上がった龍勢に対しては、流派を越えて惜しみない拍手が送られます。

この龍勢、秋の声が聞こえ始めると、それぞれの流派は1ヶ月も前から準備に入ります。
松の筒作りから始まり、火薬作り、そして旧吉田町が建てた専用の建物での火薬詰め作業まで、連日作業が続きます。
関係者以外一切立ち入り禁止のエリアで行なわれるこれらの作業は、一瞬の打ち上げに賭ける男たちの真剣勝負を垣間見る思いがして、こちらまで身の引き締まる思いです。

私がこのお祭りに参加するようになったのは10年程前からです。
「龍」という名前が一緒、しかも「和田」繋がりという事で、流派のひとつ「和田若連」の皆様が旅行の途中、マイクロバスでわざわざ来社して下さったのがきっかけです。
その感謝の思いも込めて、私もぜひ「龍勢祭」に一度お伺いしてみようと当日吉田町まで足を運んだところ、一度でこのお祭りの虜になったのでした。
それから年を追うごとに和田若連の皆様との交流も深まり、それに比例して10月の「龍勢祭」への思いもどんどん深まっていく、そんな関係がずっと続いています。

今年もあと10日で「龍勢祭」がやって参ります。
今年はどんな龍勢が打ちあがるのでしょうか?
今から期待で胸躍ります。

焼酎とお米

2008.09.24

このたび大変問題になっている残留農薬米の件ですが、清酒・焼酎業界には激震が走りました。
弊社にも問い合わせがあり、その都度お客様に「安全宣言」を出すなど、対応に追われました。
事態はようやく収束に向っていますが(善し悪しは別にして)、この一件に絡んで時折聞かれたことに、芋などの本格焼酎にも米を使っているのですか、という質問の声がありました。
今回はそれについてお話しします。

余談ですが、米焼酎・芋焼酎・麦焼酎などの「本格焼酎」は、酒税法上はしばらく前まで「乙類しょうちゅう」と呼ばれていましたが、平成18年の酒税法改正で「単式蒸留しょうちゅう」と名称が変更されました。

さてその本格焼酎、米焼酎以外の焼酎にもお米は使われています。
それは原料中のデンプン質をブドウ糖に変える「麹」が必要なためです。

以前このブログでも触れましたが、「アルコール発酵」の原理とは、ブドウ糖が酵母の力でアルコールと炭酸ガスに分解される事をいいます。
しかし、例えば清酒だと原料となるお米には糖質がないため、米中のデンプンをブドウ糖に変える必要があり、その役割を果たすのがお米に麹菌を生やした「麹」なのです。
麹が生成する糖化酵素「アミラーゼ」がデンプンを分解してブドウ糖を作り出し、そこで初めて酵母による「アルコール発酵」が可能になります。
図式では以下の通りです。

デンプン → ブドウ糖 → アルコール・炭酸ガス  
       ↑       ↑
  麹が作る糖化酵素  酵母

これは焼酎にも当てはまり、芋や麦といった原料で仕込む前に、まずアルコール発酵に必要なブドウ糖を作り出す「麹」、ひいてはお米が必要なのです。

ただ、清酒と焼酎では用いられる麹菌の種類が違います。
清酒製造に使われる麹菌は「黄麹菌」ですが、焼酎には多量のクエン酸を生成する「白麹菌」が使われています(また沖縄の「泡盛」に使われるのは「黒麹菌」です)。
このクエン酸が、もろみの雑菌の繁殖を押さえる大切な役割をします。
ちなみに清酒では、同じ役割を果たすのが乳酸です。

本醸造って?

2008.09.16

秋の気配がいよいよ感じられ始めた今日この頃。
信州上田という場所柄もあり、弊社にも多くの観光のお客様がご来店されます。
そしてお時間があるお客様には、(もちろん運転されないことを確認差し上げた上で)心行くまでお酒のご試飲をして頂きます。
その際にお客様からいろいろなご質問を頂くのですが、正直に申し上げますと、お酒のラインナップもいろいろある中で一番お客様にとって分かりにくく、私も説明しづらいのが「本醸造」というお酒です。

ちなみに「本醸造」の酒税法上の定義は以下の通りです。
・原材料は米・米麹・醸造アルコール。
・精米歩合は70%以下。
・香味・色沢が良好である。
・醸造アルコールの量は白米の重量の10%以下(白米1トンに対して100%アルコール116.4リッター以下)とする。

全然分からないでしょう?
特に4点目。
要は添加する醸造アルコール量を普通酒よりも少なめにしっかり制限してますよ、という事なんですけど、お客様にとってはまるっきり意味不明ですよね。

例えば「吟醸酒」なんかは、「精米歩合60%以下。すなわちお米の4割を削って6割以下の大きさにしたお米だけを使用したお酒は全部『吟醸酒』です。でもその味わいは千差万別。あとはお客様の好みでお決め下さい」なんて説明できるのですけれど、「本醸造」は捉えようがなくて難しいです。
「本醸造」の定義にある「精米歩合70%以下」のお酒なんて、今は当たり前ですし。

あえて「本醸造」を私なりにお客様に分かりやすく説明するとすればこんな具合でしょうか。
「原材料の一部である醸造アルコールを添加する量を制限したお酒です。これをじゃぶじゃぶ入れ過ぎてしまうとコストの安い三増酒になってしまうのですけど、しっかりと造り上げたお酒に少量を入れることでそのお酒に軽快さが増して、飲みやすくさらりと飲み飽きしないお酒になるのです」
時にはこんな説明も加えます。
「醸造アルコールはコーヒーで言えばミルクの役割でしょうか。例えばブラックのコーヒー(=純米酒)は豆の味わいや風味がストレートに分かりますけれど、それが強いとか苦手と感じるお客様もいらっしゃいます。そんな時、ごく少量のミルクを加える事で、コーヒーそのもののスタイルは残したまま味わいは優しく、そして飲みやすくなります」

でも結局一番お客様に分かって頂けるのは、「本醸造」がどういう定義なのかではなくて、我が社の「本醸造酒」はこういう特徴です、というそのものズバリの説明なんですね。
「お酒本来の味わいをしっかりと残しながらも、口当たりは軽快で喉越しも抜群。ですので何杯飲んでも飲み飽きしません。
これからは『食欲の秋』ですから食事と一緒に召し上がって頂けると料理もお酒もより一層引き立ちますよ。せっかく信州上田にいらっしゃるのですから名産の松茸をはじめとしたキノコ料理、あるいは香り高い新そば、かような素材本来の持ち味をしっかりと活かした料理と合わせて頂ければ相性抜群です。和食だけでなくバターやクリームを使った洋食にもよく合います。例えばこの季節の鮭を使ったムニエルなんかもいかがでしょうか?」
こんな具合です。

和Cafe&和Diningオープン

2008.09.09

ファイル 82-1.jpgファイル 82-2.jpg

この7月、東京の代々木上原に素敵なお店がオープンしました。
和Cafe&和Dining「木花(このはな)」。

昼間はカフェとして、純国産天草100%使用の寒天はじめ、どの素材も上質の国産を使い、ひとつひとつ手作りで生み出されたオリジナルのスイーツやあんみつ・しるこ・パフェなどを気軽に楽しめるお店です。
またテイクアウトも用意されています。

夜は和食処として、天然鯛・比内地鶏・旬の野菜など、こちらも素材と産地にとことんこだわった「和」の料理の数々がメニューを飾ります。
出自のしっかりとした食材と、そして経験に裏打ちされた料理長の技術とのコラボレーションで作られるお皿の数々は、どれも和食のおいしさ、素晴らしさを改めて感じさせてくれる逸品ばかりです。
もうひとつ特筆すべきはお酒のラインナップ。
日本酒・焼酎・ワイン・梅酒など、厳選された数々のお酒が、コストパフォーマンス抜群の価格で提供されます。

サービスも担当する女性オーナーの若松さん、「なだ万」に長く在籍し和食の腕を磨き上げた料理長の月山さん、そして手間隙かけて丁寧にスイーツを作り出す和菓子職人の後藤さん、この若い3名の「和」が店内の空気としてさり気なく滲み出ていて、それがまたこのお店の居心地のよさに繋がっています。
お近くの方はぜひ一度、気軽に足を運んでみてください。
小田急線代々木上原駅から徒歩3分です。

「木花」
渋谷区西原3-2-4 フロンティア代々木上原1F
営業時間 11:00~22:30
定休日 火曜日
電話番号 03-6903-4506

東広島「2008酒まつり」

2008.09.03

ファイル 81-1.jpg

毎年10月に行なわれている東広島市の「酒まつり」、今年も10月11日(土)・12日(日)に開催され、弊社も出品します。
平成2年から始まったこのイベント、会場の西条中央公園には全国の地酒約900銘柄が一同に集まり、例年20万人が来場するという、そのスケールの大きさに圧倒されます。

日本で唯一お酒に関する国の研究機関である「独立行政法人 酒類総合研究所」があることでも知られる東広島市、酒どころ広島県が活況を呈している様子が伝わってきますが、実は私にとっても広島県は大変思い入れが深い場所であります。
と申しますのも、私が公私ともどもお世話になっている若手の蔵元が何人か広島県にいらっしゃるのです。
福山市「天寶一(てんぽういち)」、呉市「宝剣」、東広島市「富久長」、東広島市「加茂金秀」、これらの蔵元がその方々なのですが、皆さん経営者兼杜氏あるいは製造責任者として日々邁進されています。

私がこの方々と知り合ったのは数年前なのですが、いつもお目にかかるたびに日本酒に掛ける思いや製造技術のあれこれを教えて頂き、そして話すたびにたくさんの勇気と元気を頂戴しております。
毎年一度は、以前このブログでもご紹介した上田市の隣に位置する青木村田沢温泉「ますや旅館」に皆さんお越し下さり、名湯や素晴らしい料理を堪能しながら公私入り混じっての様々な話題で盛り上がります。
逆に2年前には、ぜひ一度広島まで勉強に来ないかというお誘いを頂いて私が広島の地に赴き、皆さんの蔵をひとつひとつ見学させて頂きながらたくさんの事を学ばせて頂きました。

かような訳で、私にとって広島とは、またひとつ思い入れの深い県であります。
余談ですが、尾道市を見下ろすようにそびえる山の頂上にある千光寺公園、そこから眺めた瀬戸内海の素晴らしい景色は忘れません。

ページ移動