「登水」、「山田錦」に続きましていよいよ「美山錦」も仕込みが始まりました。
今年度の「登水」は銘柄を「和田龍登水」に変更し、ラベルも一新、大幅にリニューアルして登場します。
詳細は後日お知らせします。
楽しみにしていて下さい。
写真は精米歩合49%の美山錦です。
信州上田 ほろ酔い社長がつづる日々の記録
「登水」、「山田錦」に続きましていよいよ「美山錦」も仕込みが始まりました。
今年度の「登水」は銘柄を「和田龍登水」に変更し、ラベルも一新、大幅にリニューアルして登場します。
詳細は後日お知らせします。
楽しみにしていて下さい。
写真は精米歩合49%の美山錦です。
唐突ですが、食事に関して皆に驚かれる事があります。
ひとつめ。
私は牡蠣が大好物です。
生牡蠣、焼き牡蠣、蒸し牡蠣、カキフライ・・・どれも大好きで、際限なく食べ続けることができます。
が、ご飯と一緒に食べることができないのです。
私にとって、牡蠣はあくまでも極上の酒の肴であって、例えばカキフライ定食などはもってのほか。
牡蠣はあの磯の香りこそが命と思っているのですが、そのフレッシュな生々しさとご飯とが合うとは思えないのです。
それを話すとみんな驚きますけどね。
逆に、肉厚でプリプリの牡蠣を、それぞれの産地を確かめながら日本酒と一緒に流し込む瞬間というのは、まさに至福のひとときです。
もうひとつは握り寿司。
当たり前ではありますが、これまた私の大好物です。
が、私にとってお寿司は酒と一緒に食べるもの。
言ってみればこれまた極上の酒の肴であって、お寿司単体では、食べられない事はありませんが、お寿司のおいしさが半減してしまうのです。
例えば回転寿司も、あそこは基本的に「飲む」場所ではありませんから私は滅多に行きません(酒肴とお酒が充実しているお店は別ですが)。
しかし子供たちの希望があったりして行く時は、私は店内では一切食べず、自分が食べる分だけ持ち帰りにして、帰宅後に酒と一緒に楽しむといった事が少なからずあります。
伊集院静のエッセイで、ふらりと立ち寄った寿司屋で「1人前をゆっくり握って下さい」と頼んでビール1本とお銚子3本を楽しんだ、なんていうくだりを読むと喉が鳴りますね。
そんな訳で、私が贔屓にしている地元の海鮮処では、今の時期だけ登場するカキフライ(ひと皿5個は多いのでいつも3個にしてもらいます)と、そのあと握ってもらう1人前の寿司を楽しみながら、熱燗を閉店までダラダラと楽しんでいます。
ちなみにいつかのように、帰り道で転倒して大流血し、血まみれの私を見て玄関で妻に悲鳴を上げられそのまま緊急医に運び込まれた、なんて事はもうしないようにいつも気を付けています。
「男たち、美しく」
新宿歌舞伎町入口のビルの屋上から吊り下げられた、このキャッチコピーが書かれた垂れ幕を目にした瞬間、キャスティングの凄さと意外性に感極まり呆然と立ち尽くしたのは、浪人生だった19歳の時でした。
そこに写し出されていたのはデヴィッド・ボウイ、坂本龍一、ビートたけし、トム・コンティの4人の男たち、そしてその下には「戦場のメリークリスマス」とタイトルが掲げられていました。
折しもYMOがアルバム「テクノデリック」を最後にしばし活動を休止、しかし突如として自称「歌謡曲」路線に転向した「君に胸キュン。」を発表して、ファンの度肝を抜いた時期でもありました。
そして5月、指折り数えて映画の上映を待ち侘びた私が公開と同時に飛び込んだのは、今は無き渋谷駅前の「渋谷パンテオン」でした。
それから何回この映画を観に映画館へ足を運んだことか。
「ぴあ」でチェックしては都内の映画館を駆け回りました。
そしてその年の暮れ、YMOは「散開」。
この時のショックたるや筆舌に尽くし難く、ガックリと脱力した事を今でも覚えています。
翌年、坂本龍一がソロによる全国ツアーを開催。
その時、教授(坂本龍一の愛称)がYAMAHAと共同開発した世界初のMIDIピアノで演奏した「Merry Christmas Mr. Rawrence」を聴いて、ピアノにシンセサイザーの音源をインプットした、映画のサントラそのままの音の再現と演奏に、これまた凄まじい衝撃を受けました。
その足で楽器店に飛び込み、「戦場のメリークリスマス」のサントラ全曲をピアノ譜にした「Avec Piano」を購入、気持ちだけは坂本龍一とばかりに陰でこっそりと練習に励んだのでした。
そういえば当時「ビートたけしのオールナイトニッポン」で、ラロトンガ島でのロケの様子をたけし流に報告するのを聴きながら、次から次へと語られるエピソードに自室で爆笑していた事を懐かしく思い出します。
先週、大島渚が亡くなった翌日に、たまたま付けたWOWWOWで「戦場のメリークリスマス」が追悼放映されていたのを眺めながら、そんな思い出が次から次へと溢れてきて、こみ上げてくるものを押さえ切れませんでした。
大島監督、ありがとう。
写真はヴィンテージ・ポートとして名高い「GRAHAM(グラハム)」です。
でも残念ながら中身は空です。
ちょっとしたきっかけで空ボトルを手に入れ、今は事務所に飾ってあります。
ポートワインはその名の通りポルトガルが産地で、発酵途中のワインにブランデーを加えて発酵を止め、上品な甘さと旨みを引き出したワインです。
その中でもヴィンテージ・ポートは、優れたブドウが獲れた年だけ収穫年度を付ける事が許された、長期熟成のワンランク上のポートワインです。
写真のボトルは、ボトルそのものが手作りと思われます。
その丸みを帯びた触感は、作り手の温もりさえ感じられる気がして、ずっと触っていても飽きることがありません。
たとえ中身が空でも、そのボトルには長年の歴史の風格が漂い、事務所の一角を彩ってくれています。
ちなみに私は1963年生まれですが、この年のフランスワインは大ハズレ。
しかし反面、1963年のヴィンテージ・ポートは近年まれに見る大当たりの年で、また何かの折には口にする機会に恵まれたいものです。
しかし現在、世界中を探したとして、1963年のヴィンテージ・ポートは一体どれだけ存在するのでしょうか?
しばらく前に品川のグランドプリンスホテル高輪に泊まった時の出来事です。
チェックインの際、フロントで「本日は特別期間としてお部屋の冷蔵庫のドリンクが全てサービスとなっております」と、嬉しい言葉を頂きました。
心弾ませて部屋に入り、冷蔵庫を開けると・・・ん?空っぽ。
何も入っていません。
このホテルではしばらく前からドリンクの常備を取り止めており、いつもは冷蔵庫が空である事は知っていました。
ですので、これはフロントの勘違いとして受け流そうとしたのですが、どうも納得できません。
翌朝悩んだ末にオペレーターに電話を入れました。
出たのは、たどたどしい口調の若い男性でした。
「フロントに電話を回してください」
そんな私の依頼を、思いも掛けず彼はさえぎりました。
「もしよろしければ私にご用件をお話し頂けますか?」
正直、以外でした。
彼を単なるオペレーターと思い、しかもそのたどたどしい話し方から彼をサービスマンとして少し見下してしまった自分を、あとで私は大いに恥じる事になります。
それではと、私は事の顛末を彼に伝えました。
すると彼は「私がすぐにお調べ致しますのでしばらくお待ち頂けますか?」
そう言って電話を切りました。
再び電話が鳴ったのはわずか数分後の事でした。
彼はまず今回の不手際を詫びました。
その上で彼は続けました。
「お客様には間違いなく今回ドリンクのサービスが付いております。しかし清掃の者がドリンクを冷蔵庫に入れ忘れてしまったようなのです。これからすぐに冷蔵庫の補充に伺いたいのですがよろしいでしょうか?」
何より嬉しかったのは、彼の言葉ひとつひとつに間違いなく誠意とお詫びの気持ちが込められていた事です。
「事情は分かりました。全部のドリンクは要りません。今からミネラルウォーターだけ届けて頂けますか?」
そう伝えたあと、部屋のベルが鳴るのに時間は掛かりませんでした。
ドアを開けると、まだ初々しい黒服の男性がミネラルウォーターを持って立っています。
彼は丁重なお詫びとともに名刺を差し出したので見てみると「客室係」となっています。
「先ほど電話に出たのはあなたですか?」
「はい、私です」
「大変誠実で迅速な対応、ありがとうございました」
彼の気持ちに応えるために私も名刺を渡そうと彼を部屋に入るように言い、名刺を取って引き返すと、彼は靴を脱いで靴下姿でドアの内側に立っています。
これは客室係としての決まりなのでしょう。
しかしこのシチュエーションでは、そんな姿ひとつでさえも彼の誠実さの現われのような気がして、何だか心洗われる思いでした。
チェックアウトの際、もちろんこの一件はしっかりとフロントにも伝わっていました。
スタッフの女性が私の目を見てお詫びを述べるのを聞きながら、「クレームこそ最大のチャンス」という言葉を改めて思い返している自分がいました。
と同時に、上辺の器用さより、不器用でも誠実な姿勢こそが相手の心を動かす事を改めて実感した、そんな今回の出来事であり、客室係との出会いでした。