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レジでの狼狽

2021.05.29

現在スポーツニッポンでも鋭意連載中の、友人の女流官能小説家、深志美由紀(みゆき・みゆき)。

彼女の作品が月刊「新鮮小説」の最新号に掲載されるという事で、ネットで購入しようと思っていたところ、ふらりと立ち寄った馴染みの書店で棚に並んでいるのを発見しました。

買いたいのですが・・・表紙はグラマラスなお姉様のイラストが描かれた、ひと目見ただけで官能小説誌。

こっそりネットで買えよ、いやいや、ここで見つけたんだから恥ずかしがらずに今買っちゃえよ。
心の中で2つの思いが交錯します。

迷った末にグワシと本を手に取ってレジに向かったのはいいのですが・・・よりによって目の前に立っていたのはうら若き女性の店員さん。

焦った末に「あの、ですね、(表紙の「深志美由紀」の名前を指さしながら)彼女が私の友人でして」と必死で正当性を説明する私。

それに対して「そうだったんですね!」と明るく理解を示すリアクションが返ってくると思いきや・・・店員さんは無表情で「はい」と呟くと「袋に入れますか?」と、私の思いなどまるで眼中にない淡々とした対応が続きます。

いたたまれなくなった私は「恥ずかし~」とひと声発したのですが、それすらも無視されて「はい、どうぞ、ありがとうございます」と、冷静に包んだ本を差し出されました。

あとで顛末を妻に伝えると、ひとこと。
「そんなの、店員さんは何とも思っていないんだから、普通に買えばいいんだよ」

でもな~、通い慣れた地元の書店で50過ぎの男性がエッチな本を持ってレジに向かうのって、やっぱり恥ずかしかったのです。

そうまでして購入して読んだ深志美由紀の小説は、いつもに増して濃い味わいが脳裏を刺激しました。

皆さん、深志美由紀を応援してくださいね。
単行本もたくさん出ています。

サービスの温度差

2021.05.06

スターバックスによく行きます。

頼むのは大抵「ホットコーヒー」の「ショートサイズ」を「マグカップ」で。
税込み319円。

この商品の特典「One More Coffee」で、レシートを出せば2杯目は162円でお替りができるので、本を読みながらアツアツのコーヒーを2杯楽しむ毎回です。

私の街には3店のスターバックスがありますが、通っていると、お店によってサービスの温度が微妙に違うのが分かってきます。

表向きのサービスは同じです。
これはマニュアル通りです。

たださり気ない微妙なシーンで、それぞれのお店の温度差が如実に現れてくるから不思議です。

具体的には、市内のショッピングモールに入っている2店はいつも大変快適ですが、その反面ドライブスルーも付いたロードサイドの大型店は座席は快適ですがサービスのムラが頻繁に顔をもたげてきます。

以前このブログで、高校生がつまづいて、手に持っていたストロベリーフラペチーノを私が頭から浴びた顛末を書きましたが、この時とても気持ちのこもった温かな対応をしてくれたのはアリオ上田のスタバでした。

頻繁に「スターバックスラテ」を頼んでいた一時期、幾度となくハートのラテアートをさり気なくあしらってくれたのもこちらのお店の女性スタッフでした。

逆にロードサイドの大型店では、ブラックエプロン(格上)のスタッフが挨拶もなしに私のうしろに平然と客として並んでいたり、大好きなフレンチトーストを頼んだ際にいつものトレイもナイフもフォークもトーストを包んでいる紙ナプキンすらもこちらが言うまで用意されなかったり(意地悪されているのかと思いました)、ドライブスルーで妻のために「フラペチーノ」の「シトラス果肉追加」を注文したら、スタッフが私のドリンクを作りながら馴染みの客に「果肉追加」の意味を大声でフランクに教えているのが窓口越しに見えてきたり・・。
このお店は広さとシートが心地よいので行きますが、サービスは一切期待しなくなりました。

ちなみに昨日は、前述のアリオ上田内のスタバに行って「コールドブリューコーヒー」(アイスコーヒー)を頼んだところ、男性スタッフが「今日はいつものホットではないんですね。暑いですものね」と笑顔で語り掛けてくれました。
そのひとことがどれだけ心を解きほぐしてくれることか。

スタバに限らず、そのスタッフのひとことが心の内面から出た言葉か、あるいは上っ面の言葉かはすぐに分かります。
私も改めて肝に銘じたいと思います。

いつものあの店

2021.04.30

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平日の夕方、所用のため軽井沢へ向かいました。

コロナ禍の軽井沢。
人の姿はほぼ皆無です。
こんなに静かな軽井沢は、まるでオフシーズンの1月・2月を見ているようです。

そんな中で休息に立ち寄ったのは、旧軽井沢通りの一番奥にある、大好きな「茜屋珈琲店」。

名物の一枚カウンターの向こうから、いつものようにオーナーご夫妻が温かな笑顔で迎えてくれます。

ずいぶん前ですが、12月25日を過ぎても年賀状のデザインすら出来上がっていない中、ふと思い立って家族でこちらにお伺いして、クラシックな店内を背景に年賀状用の写真を撮らせて頂いたことがあります。
その節はわがままを聞いて頂いてありがとうございました。

さて、ゆっくり腰を落ち着けて珈琲をお願いすると、これまたいつものように、数あるブランドのカップの中からご主人が選んで、時間を掛けて丁寧に注いでくれます。

この日の1杯目はウエッジウッド。

店内の雰囲気、オーナーご夫妻のお人柄とあいまって、じっくり味わう珈琲の美味しさは格別です。

せっかくお伺いしたのでお替りを所望して、2杯目のカップはOKURA(大倉陶園)です(写真)。

軽井沢のホームに帰ってきた、そんな思いに浸って小一時間。
お店を出ると、まだ日が沈まない夕方の旧軽井沢はしんと静まり返ったままで、いつもとは違う残像を残していました。

地酒界の至宝、逝く。

2021.04.10

地酒業界には無くてはならない存在がこの世を去りました。
齋藤哲雄。
地酒専門店「小さな酒蔵応援団 革命君」代表。
40代前半の若さでした。

彼は多くの酒蔵を育て、そして数多(あまた)の地酒関係者に愛され続けてきました。
私もそのひとりです。

齋藤さんと私との出会いは平成22年5月。
初めて参加した「長野の酒メッセ in 東京」でした。

齋藤さんは当時、都内の某有名地酒専門店の番頭でした。
その日当社のブースを何度も訪れては利き酒を繰り返し、終了間際に初めて身分を明かし、取り引きの意思を示してくれたのでした。
それは「和田龍登水」が東京へ進出する大きなきっかけにもなった一瞬でした。

その後、時には上田に来てまで酒質向上のアドバイスを交わしながら、齋藤さんと私との絆は深まっていきました。

しかしある時、齋藤さんを大病が襲います。

戦線離脱で長期療養を余儀なくされた齋藤さんに、多くの地酒業界関係者が復帰のエールを送り続けました。
齋藤さんのために「俺は待ってるぜ!」という黄色いハンカチーフが作られ、私は今も店頭に飾ってあります。

そして齋藤さんは奇跡の復活を遂げました。
退院直後、船橋駅前のガストで久々に顔を合わせた時の感激は忘れません。

退院したとはいえまだまだ満身創痍の齋藤さんは、しかし愛する地酒を世に放つために自身で酒類販売免許を取得し、千葉県船橋市に酒販店「小さな酒蔵応援団 革命君」をオープンします。

たった数坪の小さな店内。
販売対象は飲食店のみ。
配達はせず配送はすべて宅配便。
体調に合わせて営業時間は午後のみ。

このように環境的には万全とはいえない「革命君」と齋藤さんを、多くの蔵元や飲食店がバックアップしていきます。

私も折に触れ、数え切れないほど齋藤さんと電話で話をしました。
そのつど多くのアドバイスをもらい、𠮟咤激励され、それはそれは大きな励みになりました。

齋藤さんが発掘して育てたお酒はその蔵元のプライドとなり、そして飲食店も齋藤さんへの信用でその銘柄を取り扱いました。

数年後、齋藤さんは自身の夢だった大きな店舗への移転を、JR小岩駅から徒歩5分という至便な立地に果たしました。
移転直後のとある日の夕方、アポなしで訪ねた私に驚きながらも、大いに歓迎してくれた齋藤さんの満面の笑顔を今も忘れません。

齋藤さんはFacebookで、「齋藤哲雄」名義では近況を、「革命君」名義では取り扱い商品情報を、連日のように発信し続けました。
それは、時には体調に不安を覚えながらも、愛する地酒を普及させるために体を張って邁進していく、さながら戦士そのものの姿を彷彿させました。

しかしそのFacebookの投稿も、緊急入院を告げた直後の今年2月7日を最後にバッタリと途絶えてしまいました。

そして2か月が経った先日。
お母様から齋藤さんの訃報を知らせる葉書が届きました。
何と入院直後の2月に亡くなったとのこと。

その時のショックと衝撃はいかばかりだったか、計り知れません。

齋藤さんの訃報はすぐにSNSで拡散されました。
齋藤哲雄という男はここまで愛されていたのかと、改めて痛感させられた思いでした。
そして今も、齋藤さんと時を共にした、私を含む多くの者が深い悲しみに包まれています。

齋藤さんが自身の体調悪化と入院を知らせる2月1日の投稿の、最後の一文を抜粋します。

「必ず直します。必ず酒屋復帰します。最後まで諦めず治療に挑みます。」

齋藤さんの思いは今も我々の心の中に生き続けています。

齋藤さん、ありがとうございました。
あなたと出会えてよかったです。

このホームページの「革命君」の名前は消さずに残します。

馳せる思い

2021.01.30

このコロナ禍で、昨年の3月以降、首都圏に行けずにいます。

イベントもすべて中止。

大好きな酒販店さん、飲食店さん、そしてお酒を通じて知り合った皆さんにお会いできないのが本当につらいです。

そんな中でも、電話やメールでのご連絡やお酒のご注文を頂けると、そのつど感謝の思いで胸がいっぱいになります。

今度県外に出張できたら、このお店とこのお店に行こう、この人とこの人に会おう、なんて考えて、でもそれじゃ一週間あっても足りないじゃんなんて、妄想を膨らますこともたびたびです。

お世話になっている方に当たり前に会って、当たり前にお礼を言える幸せを、このような状況下で改めて噛み締めています。

昨年4月の緊急事態宣言下で購入した、都内の馴染みの酒場の一年間有効のペアチケットが、間もなく有効期限を迎えようとしています。

弊社の「新酒を味わう会」のゲストとして何度も来て頂いた演奏家の東京文化会館でのソロコンサートが昨年5月に中止になり、その振替公演がこの春開催予定です。

この状況下で、果たして行くことは叶うのでしょうか。

とにかく今は前を向いて頑張るのみです。
そしてお世話になっている多くの方々との再会に、思いを馳せ続ける自分がいます。

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