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思いも掛けぬ返信

2019.11.02

東京の定宿TPホテルに今回も泊まりました。
このホテルのサービスが大好きだからです。
もう15年来のお付き合いになります。

この日もいつもの快適なサービスを期待してホテルに着いたのですが・・・何か雰囲気が違います。
ロビーが決して混んでいる訳ではありません。
でもベル担当・ドア担当、誰も声を掛けてくれません。
みんな知らんぷりです。
あとで知ったのですが、10月はちょうど人事異動だったのですね。
知らない顔ばかりのはずです。

しかし、そんな暗くなりかけた私の気持ちを吹き飛ばしてくれたのが、チェックインを担当してくれた旧知の女性スタッフMさんでした。

毎回彼女はロビーやフロントで私の姿を見つけるやいなや遠くから飛んできて元気な挨拶をしてくれる、笑顔がとても素敵なフロントレセプションのリーダーです。

この日もMさんからの快活な挨拶のあとは、楽しい会話を弾ませながら心地よいチェックインを済ますことができました。

また翌日の朝食でもレストランで彼女の姿を見つけ、満面の笑顔で出迎えられながら、爽やかな朝のひとときを過ごすことができました。

ホテルでのクライマックスはチェックアウトの瞬間であるといっても過言ではありません。
このチェックアウトの数分間が素敵であればぜひまた来ようと思いますし、逆に失望するものでしたらそれまでのホテルでの楽しい時間も吹き飛んでしまいます。

今回のチェックアウトは残念ながら後者でした。
担当した女性も異動してきたばかりだったのでしょう。
だからといって、いつもより質の低いサービスを提供してしまった言い訳にはなりません。

後日メールで送られてきたアンケート(毎回必ず回答します)に、私は快適だったこと(特にMさんのサービス)、そして決して快適とはいえなかった出来事を記して送りました。
文末に「チェックアウトの際『くれぐれもMさんによろしくお伝えください』とお願いしたメッセージは届いたのでしょうか」と付け加えました。

数日後、ホテルから返信が届きました。
いつもであれば、アンケート担当の係からの、どちらかといえば型にハマった紋切り型の文章が記されています。

が、この日は違いました。
心のこもった温かな文章です。
書いてきたのはMさん本人でした。
「メッセージは伝わっています」というひとことはあえて書かずに、でもメッセージがしっかり届いていることを言外に伝える文章に感激し、何度か読み返しました。

彼女の肩書きは「スーパーバイザー」に変わっていました。
昇進されたのですね。
ぜひこれからも、あなたのような素晴らしいホテルマンを育て上げていってください。

「3-4X10月」

2019.10.25

深夜にブルーレイで北野武監督「3-4X10月」(「さんたいよんえっくすじゅうがつ」)を久々に観直しました。

傑作です。

監督デビュー作「その男凶暴につき」に続いて北野武がメガホンを取ったこの作品は、客が入らず興行的には惨敗でした。

しかし続く「ソナチネ」も含めて、北野監督の初期3作が個人的には大好きでたまりません。

いわゆる北野ブルーといわれる映像美。
観客をあえて無視して独走し続けるストーリー展開。
北野作品ならではの静寂さと間。

例えば柳ユーレイとダンカンとたけしと愛人が沖縄の海岸で野球に興じるシーンや、続く「ソナチネ」でやはり沖縄の海岸でたけしはじめ部下たちが相撲をはじめ余興で時間を潰すシーンは、あえて「退屈」で「冗長」な場面を挟み込むことで、逆説的に映画全体に比類なき緊迫感を生んでいるという意味で、極めて重要です。

また、この映画ではBGMの音楽が一切流れません。
エンドロールも、登場人物たちが何事もなかったかのように草野球を楽しむ歓声とボールの音だけをBGMとして淡々と流れていく、その「動」を喚起させる「静」こそが、この作品全体のイメージを象徴しているといえるでしょう。
一転して次の「ソナチネ」では、多くの北野作品を手掛けることになる久石譲を初めて起用したことも、北野武のその異才ぶりを痛感させられます。

たけしが自分の愛人を押しのけて部下の渡嘉敷勝男と強引に関係を持とうとするシーンなどは、意外性に驚きながらも、この意外性は逆にビートたけし本来のリアリズムであり、このシーンだけかえって安心感を覚えてしまうことからも、「3-4X10月」ひいては北野ワールドの、あまりに強烈で劇薬的な魅力に気付かされるのです。

「サオリーナ」

2019.10.07

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法人会全国大会三重大会へ行ってきました。

この大会は、年に一度全国から中小企業経営者が集まり、来賓として国税庁長官・県知事・市長も出席するフォーマルな大会です。

今年の会場は、三重県の県庁所在地、津市産業スポーツセンター内にある「サオリーナ」。

ん?
サオリーナって何?

近鉄の津駅を降りて、シャトルバスに揺られること約15分。
見渡す限り平坦な広大な敷地の中に、ひときわ大きなアリーナが見えてきました。
これが津市産業スポーツセンター内に建つ、屋内総合スポーツ施設「サオリーナ」でした。

バスを降りてすぐに名前の意味が分かりました。
「サオリーナ」って、地元出身の吉田沙保里から名付けられたんですね。

記念写真スポットを大会スタッフに聞いたところ、建物の一番奥まで進むようにとの事。
すると目の前に現れたのが、吉田沙保里の等身大(?)フィギュアでした(写真)。

津市にとって吉田沙保里はヒーローなんですね。

大会は、講演会あり、法人会からの税制改正要望の詳しい説明ありと、有意義なものでした。

ちなみに、なかなか来ることがない三重県ですが、1年前に蔵元見学で「作(ざく)」を醸す清水清三郎商店さんと、「酒屋八兵衛」を醸す元坂酒造さんを訪問したことを鮮明に思い出しました。

大後悔

2019.08.17

今年大いに後悔している事。

それは「クラフトワーク」のライブに行けなかった事。

行けなかったというよりは、ライブ翌日、ライブに行った親友から聞くまで、そもそも「クラフトワーク」が来日していることさえ知りませんでした。
何という体たらく。

しかも会場が渋谷のオーチャードホール。
オールスタンディングではなくて椅子席の会場でライブをやるなんて、そんなの「クラフトワーク」じゃない!というのは、私のただの負け惜しみです。
オーチャードホール自体も縦に長くて見づらく聴きづらく、個人的にはあまり好きな会場じゃない、これも負け惜しみです。

でも本当に行きたかった。

YMOの先駆け、テクノの元祖というのは、もはや当たり前の話。

そしてリーダーのラルフ・ヒュッターも今や70歳越え。
でも4人のメンバーが横一列に並んで、各々が1台のシンセサイザーに向かって、微動だにせず黙々と弾くスタイルは今も健在です。
ラルフ・ヒュッター、直立不動で2時間立ち続けで疲れないか?

ちなみに以前ライブで、ひとりのメンバーが曲に合わせて思わず足踏みしてしまったところ、客席からブーイングが起きたという逸話もあります。

日本語の歌詞で歌う名曲「電卓」を、ラルフ・ヒュッターのボーカルに合わせ大声で叫ぶ興奮を、再度味わいたかった。

僕は音楽家。
電卓片手に。

足したり。
引いたり。

このボタン押せば音楽奏でる♪

「クラフトワーク」、今でも私のカーオーディオでは必須アイテムです。

「OKURA」2様

2019.08.03

ファイル 683-1.jpgファイル 683-2.jpg

写真は「OKURA」のコーヒーカップとソーサーです。

写真下の2組のソーサー。
実は模様が微妙に違っているのが分かりますか?

先日、大好きな旧軽井沢通りの一番奥に位置する「茜屋珈琲店」にお伺いした時のこと。

このお店は、カウンター奥にずらりと並んだブランド物のコーヒーカップから店主の大谷さんがその都度選んでくれた1組に、一杯一杯ていねいにコーヒーを注いでくれます。

そしてこの日、2杯目のコーヒーを頼んだ時に出てきたのが、写真下の右側のカップとソーサーでした。

ソーサーの裏側を見てもブランド名が描かれていないので、大谷さんに聞いてみたところ。
「OKURAです。見てください。珍しいでしょう。ソーサーの塗りが斑(まだら)になっていて、市販されなかった一品です。だから裏側も(ブランド・ロゴが打たれず)無地になっています」

そして棚からもう一組、同じカップとソーサーを持ってきて
「これが正規品です。ソーサーがきれいに塗られていますよね。裏にOKURAのロゴも入っています。でも私はこちらの(塗りむらがある)ほうが好きなんです」

こんな会話ができるのもこのお店の居心地の良さのひとつです。

店内は夏の真っ盛りということもあって大賑わいの忙しさ。
そんな空気を読んで今日は静かにコーヒーを味わってお店を出ようと思っていたのですが、ついつい店主と話が弾んで、意思の弱さを実感したカウンターの片隅でのひとときでした。

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