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"You look terrific."

2020.08.17

何か映画でも観ようとDVDの棚を眺めて、立て続けに2本、懐かしい名画に没頭しました。

1本目は「死亡遊戯」。

そう、あのブルース・リーの遺作です。
クライマックスの格闘シーンだけ撮影が終了していて、あとは過去の作品やブルース・リーの代役のツギハギによって完成したこの作品。

突っ込みどころはたくさんあるけれど、でも五重塔の各階に待っている敵をブルース・リーがなぎ倒していく往年のプロットや、ジョン・バリー作曲のあの鳥肌モノのメインテーマ(サントラも買ってしまいました)を聴いているだけで、この作品は満足なのです。

長野市の映画館で何とこの「死亡遊戯」が上映されていて、でもどうしても行けそうにないので、せめてもの憂さ晴らしで観た1本でした。

そして2本目は「クレイマー、クレイマー」。

高校生の時に初めて映画館で観て以来、年齢を重ねるに比例して感銘も深まるこの映画。
今回もあたたかな感動に全身が包まれました。

ここからネタバレです。

ラストシーンのメリル・ストリープとダスティン・ホフマンのセリフ。

「私、どう見える?」

これが

"How do I look? "

と言っているのは聞き取れるのですが、このあとの

「とても素敵だ」

が何と言っているのか分かりません。
でもネットにはちゃんと出ているのですね。

"you look terrific."

terrific は「素晴らしい」という意味で、look terrific は慣用語で「素晴らしく見える」。

これでこの映画が一段と好きになりました。

頭からフラペチーノ

2020.08.07

突然の出来事でした。
頭から「ミルクイチゴ フラペチーノ」を浴びました。

仕事がようやく一段落して、帰宅する前にひと息付くために寄った上田市内のスターバックス。

アイスコーヒーを注文して、出入口近くのテーブルに座って、ほんの数分後でした。

いきなり頭の上に冷たい感触を覚え、次の瞬間、私の真横でカップが床に落ちて破裂し、その勢いで全身に赤と白の半液体のアイスクリームが飛び散りました。

季節限定の「ミルクイチゴ フラペチーノ」。

床に下ろした視線をゆっくり上げると、目の前には呆然と立ち尽くしたジャージ姿の男子高校生がいました。

そしてそのうしろには彼女とおぼしき女子高生の姿も。

カッコつける訳ではありません。
が、事情を察した私は、咄嗟に「ワザとやった訳ではないから大丈夫!」という言葉を、その男子高校生に投げ掛けていました。

「すみません!すみません!」
男子高校生はすぐにペーパータオルを手の中いっぱいに持って戻ってきます。
「どうしたの?」
「うっかり落としてしまって・・・」
「ワザとじゃないから気にするな」

そう言って高校生を落ち着かせ、私はフラペチーノにまみれた洋服とジーンズを拭くために、追加のペーパータオルを取りに行きます。

私のあとを追ってくる男子高校生と、不安げに事の推移を見守る彼女。

「すみません!すみません!」
「大丈夫だから気にするな」

その言葉にようやく納得した男子高校生は、ひとりだけミルクイチゴ フラペチーノを持った彼女と一緒に店を出ていきました。

一部始終を見ていた店のスタッフの女性が「ありがとうございます」という言葉とともに大量の新品の布ナプキンを手渡してくれました。
坊主頭を拭くと、ナプキンが見事なイチゴ色に染まります。

フラペチーノが飛び散った床と壁を掃除する別のスタッフからも声を掛けられながら席を移動して外を見ると、先ほどの高校生ふたりが仲睦まじくベンチに座っています。
そして彼女の手にだけ握られたフラペチーノのカップ。

それを見た瞬間、その男子高校生に同じものをご馳走してあげれば良かったと後悔する自分がいました。
だって、高校生のお小遣いでは決して安い買い物ではなかったはず。
もしかしたら彼女の分も彼が買ったのかも。
でも、そんな事をしたら、それはちょっとカッコ付け過ぎですよね?

しばらくしてからチーフの女性が、さらに新しい布ナプキンと、ワンランク上の「コールドブリューコーヒー」を持ってきてくれて、ご厚意に素直に甘えることにしました。

そして帰宅後。
家に入るなり、私の全身から発する匂いを感知して「甘っっ!!」と叫ぶ妻がいました。

ハノン

2020.08.01

昨夜の「ららら♪クラシック」は「ハノン」の特集でした。

「ハノン」・・・懐かしい。
実は私も幼少から17歳までピアノを習っていました。
もちろん「ハノン」も弾きました。

でも「ハノン」はあくまでもピアノ教則本であって、先生の家に習いにいっても、とりあえず「ハノン」で手慣らしをして、それからいよいよ本格的な曲に立ち向かう・・・誰もがそんなイメージではないでしょうか。

だから今回「ハノン」の音楽的魅力を前面に打ち出して紹介されたのは目から鱗でした。
「ハノン」ってこんなにカッコいいんだっ、て感じで。
妻はテレビを見ながら、わざわざ「ハノン」の楽譜を取り出して、曲と一緒に音符を追っていました。

ところで妻が大好きなテレビ番組が、NHK-BSの「駅ピアノ」「空港ピアノ」です。
世界中の駅や空港に置いてあるピアノに座って、お気に入りの曲を自由気ままに弾く人の姿を定点カメラで追ったドキュメントです。
毎回わざわざ録画して見入っています。

最近は日本でも、えっ、こんな駅にもピアノが置いてある、という光景を私もしばしば見掛けます。
そんな時、私も「駅ピアノ」のように、躊躇なく大勢の人前でピアノが弾けたらなんて、思わず夢想する毎回です。
ちなみに、もし私がそんな時の1曲を選ぶとしたら、坂本龍一の「DEAR LIZ」か「PAROLIBLE」かな。

もっと真剣にピアノに取り組んでおくんだったといつも後悔しています。

レジ袋有料化

2020.07.25

すごく些細な事です。

7月1日よりレジ袋が有料になりました。

で、それに関して書店の対応についてです。

書店で買った本をビニール袋に入れてもらうと、他の本を入れられないように盗難防止のためなのか、必ずといっていいほど手提げの部分の穴にセロテープを貼られます。

あれって、いざ剥がす時にセロテープの粘着力が強すぎて、穴の部分が破れるか歪んでしまうんですよね。
だから、せっかくきれいにデザインされた書店のレジ袋が台無し。
きちんと保管している身とすれば、なぜ自社の広告ともいえるビニール袋にセロテープなんか貼るんだろうと思っていました。

そして今回の有料化。

これからは客は書店のレジ袋を有料で買うわけですから、はっきりと「セロテープは貼らないでください」と伝えています。
そして「剥がす時に袋が痛んでしまうので」としっかりと付け加えています。
「えっ?」という顔をする店員が多いです。
たぶんご自身では、自社のビニール袋に貼られたセロテープを剥がすという経験なんてした事がないんでしょうね。

その書店ごとの、きれいで個性あるレジ袋に対してのプライドを、もっと書店員は持つべきだと思います。

棋士、瀬川晶司と久保利明のこと

2020.07.18

将棋の藤井聡太七段が棋聖のタイトルを獲得しました。
最年少記録を打ち立てての奪取は間違いなく快挙です。

近年、将棋界の枠を超えて社会現象にもなった話題はいくつかありました。

その中のひとつが、元奨励会三段の瀬川晶司が前代未聞のプロ棋士編入試験に合格というニュースでした。

当時は奨励会という狭き門を抜けるしかプロ棋士にはなれなかった時代に、新たな道を切り開いた画期的な出来事でした。

今日はこの瀬川晶司の自伝を映画化した「泣き虫しょったんの奇跡」について語ります。

ストーリーを簡単に記せば、プロ棋士の養成機関である奨励会へ入会した「しょったん」こと瀬川晶司が26歳という年齢制限に阻まれて、志(こころざし)半ばに一度は挫折。
しかしアマチュアに戻った瀬川がプロ相手に脅威的な勝率を上げた事から前代未聞の「プロ棋士編入試験」が認められ、「プロ相手に6戦中3勝」という条件を見事にクリアし合格するという奇跡を描いた自伝です。

当時、アマチュア瀬川晶司がプロ棋士を次々と倒していく中で、「プロ編入試験」への大きな鍵を握る1勝となったのが、A級八段久保利明(現九段)に対しての勝利でした。

その頃はアマチュアがA級八段に勝つこと以前に、A級八段との対局が実現する事すら夢物語と思われていた時代でした。

しかし瀬川は「銀河戦」というテレビ棋戦でプロ棋士を次々となぎ倒し、ついに久保八段と顔を合わせる事となります。

しかしここでも、私も含めて誰もが久保先生の圧勝を疑わない中、瀬川は堂々たる勝利を収めます。
私はその対局をリアルタイムで観ていましたが、「投了」の意志を告げるために無言で頭を下げそのまま沈黙を貫く久保八段の胸中やいかに、さぞかし悔しさと自責の念が心を渦巻いている事とその心中を察していました。

そんな久保先生に大いに驚き感動し涙したのは、映画「泣き虫しょったんの奇跡」を観た時です。

クライマックス、瀬川が久保八段に勝つシーンを、何と久保先生本人が演じているのです。

最初は我が目を疑いました。
まさか、あの屈辱的なシーンを久保先生ご自身が演じるはずがない。
しかし映画で、松田龍平演じる瀬川と対局し、最後に「負けました」と告げたのは、まごう事なき久保利明本人でした。

映画のため、ひいては将棋界の興隆のため、棋士人生の傷ともなり兼ねなかった過去の自分を演じる久保先生のその男気、生きざま・・・自然と涙が溢れ、思わず「かっこいい」と呟く自分がいました。
もう一度言います。
久保利明先生、かっこいい!!

自身の手で自分の人生を切り開いた瀬川晶司六段はもちろん大好きですが、この映画を観て、久保利明九段の事も、もっともっと好きになりました。

なお久保先生は「プロ編入試験」で第3局の試験官となり(この人選をした当時の米長理事長も凄いですが)、しっかりと勝利し、瀬川に借りを返した事を付記しておきます。

ちなみにこの「泣き虫しょったんの奇跡」、他にも多くの棋士が出演していて、それを探し出すのも一興です。
特に、瀬川が3勝目を上げて合格を決める相手の棋士、高野秀行六段を、このたび藤井聡太が更新するまで最年少タイトルの記録保持者だった屋敷伸之九段が演じていたのは白眉でした。
それと将棋界のエンターテナー神吉宏光七段が、本人役で、瀬川と対局をした時と全く同じ、どピンクのスーツで登場したのには当時を思い出して爆笑してしまいました。

なお瀬川晶司先生ご本人は出演していません。

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