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頭からフラペチーノ

2020.08.07

突然の出来事でした。
頭から「ミルクイチゴ フラペチーノ」を浴びました。

仕事がようやく一段落して、帰宅する前にひと息付くために寄った上田市内のスターバックス。

アイスコーヒーを注文して、出入口近くのテーブルに座って、ほんの数分後でした。

いきなり頭の上に冷たい感触を覚え、次の瞬間、私の真横でカップが床に落ちて破裂し、その勢いで全身に赤と白の半液体のアイスクリームが飛び散りました。

季節限定の「ミルクイチゴ フラペチーノ」。

床に下ろした視線をゆっくり上げると、目の前には呆然と立ち尽くしたジャージ姿の男子高校生がいました。

そしてそのうしろには彼女とおぼしき女子高生の姿も。

カッコつける訳ではありません。
が、事情を察した私は、咄嗟に「ワザとやった訳ではないから大丈夫!」という言葉を、その男子高校生に投げ掛けていました。

「すみません!すみません!」
男子高校生はすぐにペーパータオルを手の中いっぱいに持って戻ってきます。
「どうしたの?」
「うっかり落としてしまって・・・」
「ワザとじゃないから気にするな」

そう言って高校生を落ち着かせ、私はフラペチーノにまみれた洋服とジーンズを拭くために、追加のペーパータオルを取りに行きます。

私のあとを追ってくる男子高校生と、不安げに事の推移を見守る彼女。

「すみません!すみません!」
「大丈夫だから気にするな」

その言葉にようやく納得した男子高校生は、ひとりだけミルクイチゴ フラペチーノを持った彼女と一緒に店を出ていきました。

一部始終を見ていた店のスタッフの女性が「ありがとうございます」という言葉とともに大量の新品の布ナプキンを手渡してくれました。
坊主頭を拭くと、ナプキンが見事なイチゴ色に染まります。

フラペチーノが飛び散った床と壁を掃除する別のスタッフからも声を掛けられながら席を移動して外を見ると、先ほどの高校生ふたりが仲睦まじくベンチに座っています。
そして彼女の手にだけ握られたフラペチーノのカップ。

それを見た瞬間、その男子高校生に同じものをご馳走してあげれば良かったと後悔する自分がいました。
だって、高校生のお小遣いでは決して安い買い物ではなかったはず。
もしかしたら彼女の分も彼が買ったのかも。
でも、そんな事をしたら、それはちょっとカッコ付け過ぎですよね?

しばらくしてからチーフの女性が、さらに新しい布ナプキンと、ワンランク上の「コールドブリューコーヒー」を持ってきてくれて、ご厚意に素直に甘えることにしました。

そして帰宅後。
家に入るなり、私の全身から発する匂いを感知して「甘っっ!!」と叫ぶ妻がいました。