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サービスの心構え

2018.09.24

先日、東京で泊まった定宿のTPホテル。
私の大好きな言葉「ホスピタリティ」を存分に体感できるホテルとして、15年来のお付き合いになります。

今回も到着した瞬間、馴染みのドアベルの女性やフロントレセプションの男性の流れるような連携に迎えられながら、心地よいチェックインの手続きを済ませます。
この数分だけで、このホテルを選んでよかったと実感するひとときです。

サインをしたあとに担当の男性曰く。
「(私が予定時間よりも早く到着してしまったため)予定していたお部屋の準備が出来ておらず、申し訳ございませんが別のお部屋にご案内致させて頂きます。ですので(いつも個人的にお願いしている)アメニティが揃っておりません。追ってお届け致しますので、ご容赦ください」

部屋のベルがなったのは、それからすぐの事でした。

ドアを開けると、係の若い女性が、数紙の新聞やミネラルウォーターはじめ、いつもお願いしているアメニティを抱えて立っています。

私も両手が塞がっていたので「申し訳ありませんが、部屋の中まで持ってきて頂けますか」

その瞬間、その女性は笑顔とともに、ドアの前で靴を脱いで部屋に入ってくるではありませんか。

「靴は脱がなくてもいいですよ」と伝える私に、彼女の返答は「いえ、お客様のお部屋に我々が土足で入る訳には参りませんから」というものでした。
備品をきれいにテーブルに並べた彼女はお辞儀をしながら部屋をあとにしましたが、その姿勢にしばし心打たれる自分がいました。

そういえば、以前も部屋の不具合を指摘した時にも、係の男性は靴を脱いで入ってきたなあ。
そういうさり気ないところで、日頃のサービスの心構えって分かりますよね。

今回はその他にも、宿泊後にネットで届くアンケートに、前回素敵なサービスを受けた女性の名前を記したところ、彼女がわざわざ「アンケートに私の事を書いて下さり、ありがとうございました」と挨拶に来てくれたり、私が知る一番古株の宿泊リーダーの男性がセクションを超えてチェックアウトの手続きまで丁寧にお付き合い頂いたりと、いつもながらの非日常の快適な空間を堪能させて頂きました。

と同時に、私も「ホスピタリティ」や「心のこもった接客」を常に心掛けねばと、改めて気持ちを引き締めた次第です。

思い出の店

2018.09.01

普段は滅多に飲まない紅茶を久々に飲んでいて、学生時代に通った喫茶店を思い出しました。

私が住んでいた東京の某私鉄沿線の駅前の、いかにも普通の喫茶店です。

ある時、一緒に入った先輩が紅茶を頼んだところ、何とリプトンのティーバックが浸かった紅茶が平然と出てきました。
値段は確か450円。

「喫茶店でこれはないですよね」「値段もたけえなぁ」とか2人で苦笑する中、先輩が突然マスターを呼びました。

テーブルの横まで来たマスターに、先輩は笑顔でひとこと。
「このお店の紅茶、とっても美味しいですね!」

マスターは無言でカウンターの奥へ去っていきました。

もう1店、以前このブログにも書いた、学生時代に驚いたお店があります。

品川プリンスホテルにテナントで入っていたスパゲッティ専門店。
そのお店の名前を冠した一番安いスパゲッティが、何とお替り自由という事で、喜び勇んで頼んだところ・・・。

出てきたのはただの茹でたパスタ。
ソースがかかっていないどころか、味付けすらしてありません。
そこに、タバスコと粉チーズだけで味付けして食べろという、とんでもないシロモノでした。
しかも値段は忘れもしない780円。
衝撃でした。

やがてこのスパゲッティは、後輩が何杯食べられるかというチャレンジメニューになりました。
3杯が限度でしたけど。
今こんなメニュー出したら怒られるよな。

2度買いの本

2018.08.18

お盆休みの束の間の休息を使って、書物であふれた書架を整理しました。

すると、出てくるんですよねえ。
2度買いしてしまった本。
いかに自分が「積ん読」かが分かります。

貴志祐介「硝子のハンマー」。
村山由佳「ダブルファンタジー」。
東山彰良「僕が殺した人と僕を殺した人」。
レイモンド・チャンドラーのシリーズ。
京極夏彦数点。
などなど。

中には、中上健次や開高健、「ゴッドファーザー」や「羊たちの沈黙」シリーズなど、どこでも読めるように、わざと2冊揃えた本もあるのですが・・・。

で、悔しいので、貴志祐介「硝子のハンマー」を早速読み始めました。
そうしたら面白くて止まらない。
深夜、ウイスキーのハーフ瓶をラッパ飲みしながら文字を追い続けました。

貴志祐介といえば、初期の代表作「黒い家」を読んだ時の事を思い出します。

さかのぼる事10年ほど前。
場所は岩手県石鳥谷町、南部杜氏で有名な町です。
ここで毎夏開かれている「南部杜氏協会講習会」に参加した折、持参した「黒い家」のページをうっかり開いてしまったから、さあ大変。
講習会の勉強そっちのけで、それから数時間、脇目も振らずに読了したのでした。

ちなみにこの「黒い家」も受賞している「日本ホラー小説大賞」の作品が私は大好き。
瀬名秀明「パラサイト・イブ」とか、岩井志麻子「ぼっけえ、きょうてえ」なんか有名ですよね。

中でも私のお気に入りは、遠藤徹「姉飼」と、恒川光太郎「夜市」の2作。

「姉」という異生物を飼い慣らす事に魅了され、自己を崩壊させていく様を描いた耽美主義的ホラー「姉飼」。

片や、夜市という異界に迷い込んだ主人公たちが遭遇するファンタジックな世界と驚愕のエンディングに眩暈(めまい)すら覚える「夜市」。

どちらも、何度読んでも読み飽きない、ホラー小説大賞の名に相応しい作品です。

さて、それでは次はギムレットでも飲みながらレイモンド・チャンドラーでも読みますか。
な~んて事がサマになればカッコいいんですけど。

「カサンドラ・クロス」

2018.06.30

DVDでつい何度も観てしまうお気に入りの映画ってありますよね。
そんな1本の「カサンドラ・クロス」を、先日もまた観てしまいました。

初めて観たのは中学生の時。
上田の小さな映画館でした。

大好きな鉄道モノで、全編に渡って列車が舞台となる本作に大いに興奮して、その時買ったサントラのLPは擦り切れるほど聴きました。
ちなみに作曲は、映画音楽の世界ではジョン・ウィリアムスと並ぶ(と私は思っている)ジェリー・ゴールドスミスです。

物語はというと、ジュネーブのWHO本部を襲ったテロリストが誤って細菌を浴びてしまい、そのまま逃走してストックホルム行きの大陸横断特急に乗り込みます。
しかし、その細菌はアメリカが秘密裏で開発していたものだったため、アメリカ軍は列車を急遽ポーランドに向かわせ、途中、何十年も未使用のため老朽化した鉄橋「カサンドラ・クロス」で列車ごと転落させる事で、事実の隠蔽を目論みます。
それに気が付いた乗客が・・・。

私は大好きな1本ですが、でも世間や評論家の評判は決して高くない、いわゆるB級鉄道パニックアクションです。
クライマックスでカサンドラ・クロスから列車が落ちるシーンなんて、見るからにセットで、ものすごくチープ感が漂っているし。

でも好きなんだもの。

この映画を観るたびに驚愕するのは、こんなB級映画に出演している俳優の顔ぶれ。

リチャード・ハリス
ソフィア・ローレン
バート・ランカスター
エヴァ・カードナー
イングリット・チューリン
マーティン・シーン
リー・ストラスバーグ
O.J.シンプソン
レイモンド・ラブロック

ね、凄いと思いません?
しかも誰もがほぼ主役級。
何でこんなB級映画に出演を快諾したのか、観るたびに考え込む毎回です。
だって、ソフィア・ローレンやエヴァ・ガードナーがアクションしているんですよ。

とにかく私は大好きなんです、この映画。
また観ます。

これはこれで楽しかったランチ

2018.06.02

相性の悪い店というのはあります。

東京渋谷のCホテル内にある中華レストラン「C」。
中国料理界では有名な大御所の弟子がトップシェフを務め、料理は旨いが値段もそれ相応(つまり高い)。
でもそれを承知で、このお店の料理を一度味わいたくて初めて入ったのはしばらく前の事でした。

その時は料理以前に、我々の席を担当した黒服の態度の横柄さに閉口し、支払いの際には、ポイントが付くと思って出したそのホテルのカードを「当店ではポイントは付きませんから」と、一瞥しただけで返すでもなく、トレイの上にカードを放っておかれたあの不快さは今でも忘れません。
あのまま私がカードを取らなかったらどうなっていたでしょうか。

しかし先月、そのホテルの喫茶で大切な方と打ち合わせをする前に、ランチを取るためにその中華レストランに入ったのは、ホテル内の他のお店はすべて満席だった、それだけの理由でした。

メニューを渡しに来た黒服に、あと1時間しかない事を告げ、その上で彼が選んだコースメニューを選択したにも関わらず、料理は遅々として運ばれてきません。
残り15分を切ったところでまだメインもデザートも出てこない事に痺れを切らし、「もうここまででいいから」と伝えると「あ、1時30分まででございましたね。急がせます」と優雅に振る舞う彼は気を利かせたつもりだったのでしょうが、この時点で君は全然気を利かせてないからね。

そしてほぼ同時に出てきたメインとデザート。
メインの炒飯を瞬時でかっ込み、デザートのプリンはひとくち手を付けただけで即会計。
「すみません」のひとこともなく、そのかわりに「当店は少し前からホテルポイントが付くようになりました。もしカードがございましたら」と言われた滑稽さに、カードを出しながらむしろ笑ってさえしまった、ある意味貴重なランチでした。

料理そのものは秀逸なのに、「人」で美味しさって変わるんですね。

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