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H20BY「登水(とすい)」

2008.11.08

本年度の仕込みで4年目を迎える「登水(とすい)」、おかげ様で増量の見込みです。
今年もこれまで同様、「登水・吟醸酒」は精米歩合59%の山田錦、「登水・純米酒」は精米歩合49%の美山錦で行う予定です。

「これまで同様」と書きましたが、実は悩みもありました。
と申しますのも、従来の「吟醸酒」を、アルコール添加せずに純米化したらどうだろうという考えが一時頭の中をよぎったのです。
両方とも純米酒として、「山田錦純米酒」と「美山錦純米酒」の2本立てとしてみようか、そんな思いが心を駆け抜けました。

今、「アルコール添加」に対する風当たりが強くなっているのは事実です。
それは、「米・米麹」のみを原材料として造られる純米酒こそ本来の日本酒で、戦時中の「三増酒」の流れを汲むアルコール添加酒とは一線を画すべきではないかというご意見です。

アル添の有無に関しては、私が信頼している酒販店の経営者にも相談しました。
そんな中で心打たれた言葉は「とぢらでもいいです。私は和田さんが出したいと思った酒を売ります」というひと言でした。
これで目が覚めた思いでした。

結論を申し上げますと、今年度も「登水・吟醸酒」についてはアルコール添加致します。
確かにアル添に対するご批判があるのは受け入れます。
ただ、現在のアルコール添加の技術とは、はるか昔の三増酒のようにただじゃぶじゃぶと注ぎ込むのではなく、お酒に軽快さと飲みやすさを加え、品質を安定させ、酒質をグレードアップさせるための繊細かつ大切なひとつの手段として認められ、そして研究されているものです。

「登水」に関していえば、「吟醸酒」と「純米酒」、この2種類の味わいの違いを明確化するために、「吟醸酒」はひとつの技術としてアルコール添加致します。
「山田錦」と「美山錦」、「精米歩合59%」と「精米歩合49%」、そんなスペックの違い同様、「アル添あり」と「アル添なし」という要素を加えて味わいの間口をさらに広げ、お客様に日本酒の多様性を楽しんで頂きたいと思います。
しかもできるだけお安いお値段で。

お酒は対話商品です。
お客様の嗜好や思いを把握してそのお客様に合った商品をお出しする、更には新たな味わいの世界を紹介してお酒を一層好きになって頂く、「登水」がそんな一助になれればいいと、本当に生意気を申しますが思っております。

ところでもうひとつ、使用する酵母をどうするか今悩んでいます。
これまでは「登水・吟醸酒=協会9号」、「登水・純米酒=アルプス酵母」でやって参りましたが、より良い酒質とするために柔軟な思考で、変更も視野に入れて最終決定したいと思います。

まだまだ発展途上のお酒ではありますが、毎年少しずつでも進化して、ひとりでも多くのお客様に喜んで頂けるために頑張ります。