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「蔵の中」

2019.04.06

書店に行った際に、大好きな横溝正史がフェアで並んでいるのを見つけて釘付け。
まだ入手していない作品がないか眺めていて、ハッと目に付いたのが「蔵の中」、すぐに棚から抜き取りました。

「蔵の中」。
これは金田一耕助シリーズとは全く別の、独立した耽美的小説です。

この作品に初めて触れたのは私が高校生の時。
角川で映画化され、金田一耕助シリーズの「悪霊島」と同時上映されたのが最初でした。

「悪霊島」で流れるビートルズの「LET IT BE」が、なぜか横溝作品のラストシーンを飾るのに見事にマッチしていたという衝撃を凌ぐ衝撃が、この「蔵の中」にはありました。
(ちなみに現在は版権の関係で「悪霊島」のDVDからは「LET IT BE」はカットされているそうです)。

隔離された蔵の中での、病に伏せる姉と、姉に思いを寄せる弟とのただならぬ関係。
そしてふたりが蔵から双眼鏡で覗き見る異端の世界。
陰影を含んだ官能的な映像とともに心に飛び込んできたシーンの数々は今も忘れません。

余談ですが、主演を演じた無名の美人女優、松原留美子が実はニューハーフだった事も大いに話題になりました。

いずれにしても、2本立てのメイン作品をサブ作品が食ってしまったという稀なパターンを、この時私は体験したのでした。

さて、その「蔵の中」ですが、実は小説は未読のままです。
今回即買いしたので、早速時間がある時に熟読しようと思っています。