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「ひやおろし」一考

2010.09.30

今が旬の「ひやおろし」、せっかくの旬なので他の蔵元の「ひやおろし」も機会あるごとに飲んでいます。

先日も出張先の居酒屋さんで店長おすすめの「ひやおろし」を5種類、じっくりと楽しませて頂きました。
また自宅にはこれから封を開ける「ひやおろし」が4本、静かに眠っています(あっという間に空になること必至です)。

さて、その「ひやおろし」、実は酒税法上の厳密な定義はありません。

ただ通常「ひやおろし」とは、冬の厳寒期に搾った新酒をひと夏越してじっくり寝かせ、円熟した味わいとなった秋に出荷するお酒を指します。
加えて、一般的には「純米酒」で、搾った直後のみ「火入れ」を行い、出荷時の「火入れ」は行わない、いわゆる「生詰め」(「生酒」とは違います)の状態で出荷されます。

さて、その「ひやおろし」、お酒そのものが良いことはもちろんですが、それと同じくらい気を使うのが熟成の度合いです。
フレッシュでもいけないし、かといって古酒のように熟成し過ぎてもいけない。
秋に向けて、いかに目標とする熟成具合に持っていけるかというのがひとつの勝負なのです。

各蔵とも常温で寝かせたり、あるいは温度調節をしっかりして冷蔵庫で寝かせたり、それぞれ考えを巡らせます。

ちなみに私は4℃の冷蔵庫で貯蔵しました。
8月に取り出して試飲してみたところ、若干フレッシュ感は残っていたものの、円やかで程よい熟成感に仕上がっていて、ほっと胸を撫で下ろした事を思い出します。

他の蔵元の「ひやおろし」も、それぞれが目指した円熟さに仕上がっていて、それがまた「ひやおろし」の楽しみ方のひとつだと改めて納得した次第です。

そんな「ひやおろし」の飲み方ですが、弊社の「ひやおろし」に限っていえば「常温」もしくは「軽く冷やして(13℃位)」という温度帯をお勧めしています。
例えば「秋口の爽やかな風が通る、朝夕の自宅の玄関や廊下に置いた状態」というのもベストです。
「ぬる燗」もいいですね。
ただ冷やしすぎると甘みや旨みが引き締まりすぎて、「ひやおろし」本来の味わいがちょっぴりしぼんでしまいます。

さあ、いよいよ味覚の秋到来です。
わが街信州上田では、名物の松茸小屋が一斉にオープンし、多くのお客様で賑わっています。
皆様もぜひ日本酒の秋の風物詩「ひやおろし」と共に、秋の食材を存分にお楽しみ下さい。