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「岬」

2021.10.16

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私が最も好きな作家のひとりが中上健次です。

もう何十回読んだか分からない、中上健次の初期の代表作でもあり芥川賞受賞作でもある「岬」。
読み込み過ぎて、本は黄ばんでいます(そのため保存用のハードカバーをもう1冊持っています)。

そしてその「岬」を含め中上文学がいかに生まれ、そして変遷していったかを詳細に描いた、高山文彦の「エレクトラ 中上健次の生涯」を読むたびに、再び「岬」を読まずにはいられなくなります。

中上文学を語る上で切っても切れないれないもの。
生まれ育った紀伊半島、新宮・熊野の大地。
紙に書き出さねば理解できないほどの複雑な家系。
そして彼が被差別部落出身であるという出自。

この3つは中上文学の生涯のテーマでもあります。

「エレクトラ」を読むと、これらがいかに小説を書く熱い衝動として、中上健次を突き動かしていったかがよく理解できます。

46歳の若さで世を去った中上健次の足跡を追いたくて、彼の生地の新宮を2度尋ねました。
事前に新宮観光協会に何度か連絡を入れたところ、当日は思いも寄らず観光協会の方がお出迎え下さり、中上健次ゆかりの場所を案内して頂き、感激したことを思い出します。
あの時の空気、あの時の匂いが今も感じられるからこそ、中上文学をより深く感じられる自分がいます。