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酒場の片隅で。

2011.05.15

先日、東京四谷の日本酒専門酒場を訪問した時のことです。

こちらのお店は、店長さんはじめスタッフの皆さんと昨年とある展示会で知り合いました。
それから折に触れ叱咤激励を頂き、時にはわざわざ信州上田までお越し下いて様々なアドバイスを頂戴し、仕事を越えたお付き合いをさせて頂いて参りました。
当然、酒質には一切妥協を許さないお店なので、今年の新酒に関しても合格のお言葉を頂いた時は、飛び上がるほどの嬉しさでした。

この日はそんなお店のカウンターの片隅で飲んでいると、隣に座ったご夫妻が、何と偶然にも当社のお酒を飲まれているのを発見しました。
こういう時はくすぐったい嬉しさに包まれる反面、ものすごく緊張もしますよね。
隣に当の蔵元がいるとも知らずにどんな会話が飛び出すのか、酔いも覚めんばかりに胸が高鳴ります。

そうこうしているうちに店長さんが私の正体を明かし、目を丸くするご夫妻とあっという間に意気投合。
気が付くと今知り合ったとは思えない間柄のように、楽しく語り合っている私たちがいました。

お互いに身分を明かし合い、お酒の話で盛り上がり、会話の輪が広がっていく、これぞ日本酒マジックです。

そのうちにご夫妻の奥様がさり気なくひとこと。
「私、お酒の匂いを嗅いただけで、どんな方がこのお酒を造ったのか、その姿が頭に思い浮かぶんです」
何とも魅惑的で素敵なお言葉です。
「すみません、私、自分のホームページでブログを書いてまして、今のその言葉を載せてもいいですか?」
お許しを頂いたので載せちゃいました。

そうこうしているうちに時間も経ち、ぼちぼちお暇しようとお会計を済ませて席を立ったところ、店長さんに呼び止められました。
「あちらにいるお客様が和田さんのお酒を飲んで感激して下さっているよ」
そう言って、若手数名で飲んでいるテーブルに案内されました。

店長さんにご紹介頂くと歓声があがり、双方驚きと感激の中でしばし会話に花が咲きます。
上田を舞台にした映画「サマーウォーズ」の名前も飛び出して、何とも嬉しい気分です。
せっかくだからと私は皆さんに名刺をお渡しして、「もし上田にお越しになる機会がありましたら、お酒は買わなくてもいいです、これもご縁ですからぜひご一報下さい」とお伝えしました。

そして今日パソコンを開くと、見知らぬアドレスからメールが届いています。
何と、その時会話を交わしたおひとりからのメールでした。
嬉しかったですね!
あのようなさり気ない出会いを大切にして下さったその方のお気持ちに感激しながら、すぐに返信を打ちました。

酒場の片隅で起きたさり気ない、けれど嬉しい出来事でした。

酒は人と人とを繋ぐ人生の名脇役。
今日も酒場のあちこちでたくさんの出会いがあります。