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晩酌の楽しみ

2009.07.03

自宅で晩酌する時は、必ず他の蔵元のお酒を、しかもできるだけ2本以上並べて飲むようにしています。
多い時には5本以上のお酒が卓上を飾ります。
いろいろな蔵元のお酒を味わうことは大変勉強になりますし、またこれは私の持論ですが、利き酒の能力を高める一番手っ取り早い方法は、何本かのお酒を同時に飲んで比較して、心の中でも構わないので自分の言葉で表現してみる事だと思っています。
まあそれはただ単に飲兵衛の言い訳だと周りからは突っ込まれそうですが。
でも、日本中の数限りない銘柄のお酒や、あるいは同じ銘柄の中でも違ったスペックのお酒を飲んでいると、いつも新しい発見や感動があって、おいしさとあいまって、それは本当に楽しいひとときです。

ここのところ、同一銘柄の純米吟醸で、精米歩合が50%と60%のものを一緒に買ってきて飲み比べるという事を何度か繰り返しています。
ここ数回を例に挙げると「大吉野」(長野県)、「獺祭(だっさい)」(山口県)、「大信州」(長野県)、「貴(たか)」(山口県)等です。
長野県と山口県に偏っているのは、これはたまたまです。

こうやって、例えば「純米吟醸」といった同じクラスで精米歩合だけが違う同一銘柄を飲み比べてみると、もちろん使用米や酵母が異なる場合もありますが、「精米歩合」の違いが味わいにどのように反映されているかがよく分かります。
特に「精米歩合50%」と「精米歩合60%」というのは、その違いが微妙なだけに、その「10%」の差が生み出す味わいの差が、比較する事によって明確に体感できます。
言い換えると、お米を削る事によって生まれる、日本酒の深みがはっきりと理解できるのです。

もうひとつ、この飲み方によって、どのお酒にも共通するその蔵元独自の味わいが、ある程度分かってきます。
先日も、いつもお世話になっている酒販店さんにお伺いした際、勉強のために試飲させて頂いたお酒がたまたましばらく前に晩酌で飲んでいたお酒で、いつもの味わいとは趣きを異にしているなあと思ったら、やはりそのお酒は新規需要を呼び起こすための、あえて違う方向性を目指した新銘柄である事を教えて頂きました。
こんな事もお酒を飲む上でのさり気ない楽しみのひとつです。