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続きを話しに。

2020.06.13

昨夜久々に訪れた、長野市の銘酒居酒屋「べじた坊」。

日本酒担当の石垣さんとは様々なジャンルで話が合い、カウンター越しに尽きることなく語り合う毎回です。

今回のテーマは「中上健次」。

私が敬愛する小説家、中上健次を石垣さんがお店のブログで何日にもわたって取り上げていて、私が思わず反応してメッセしたのが昨日の午前中のこと。

それから何回かSNS越しに中身の濃いやり取りをし合ったのち、「続きを話しにきました」とお店を訪問したのが半日後の夕方でした。

カウンターに座るやいなや、中上健次のこと、さらにはそこから派生するさまざまな小説や音楽の話題で石垣さんと花が咲きます。
それにしても石垣さんの博識ぶりといったら。

そしてその間にお任せで次々にグラスに注がれてくる日本酒は、石垣さんセレクトの、どれも珠玉といっていい一杯です。

さらには、お料理を担当されている若林さんの心のこもった酒肴の数々が並び、会話とお酒に彩(いろどり)を添えます。

思えば、このお店のカウンターで知り合った多くのお客様と、今もご縁が繋がっていたりもしています。

「べじた坊」。
酒と料理と人の魅力に酔うことができる素敵な空間です。
石垣さん、若林さん、またお伺いしますね。

テレビの愉しみ

2020.05.21

水曜日の夜の楽しみがひとつ増えました。

21:00からNHK-BSで放映されている「刑事コロンボ」。

子供の頃から大好きで、DVDも原作本もすべて持っているのだけれど、NHKの再放送を観るという行為は放映当時の思いを彷彿とさせてくれて、これまた格別です。
水曜日の夜は極力21:00までに仕事も食事もすべて済ませて、襟を正してテレビの前に座るようにしている毎回です。

昨夜は第8話「死の方程式」。
この作品も何度も観ていて、映像の細部やクライマックスのセリフまで覚えているのに、まったく飽きることのない「コロンボ」のこの魅力は何なのでしょう。

第3作「構想の死角」の監督が、これがデビューとなるスティーブン・スピルバーグだったり、「悪の温室」と「溶ける糸」の犯人役がそれぞれジョン・カサベテスやレナード・ニモイ(「スタートレック」のミスター・スポック)だったり・・・スタッフやキャストの豪華さ・話題にも事欠きません。

ちなみにレナード・ニモイが来日した折、当時浪人生だった私がたまたま訪れた新宿の紀伊国屋書店で、ばったり遭遇。
あまりの興奮で卒倒しそうになりました。
その時もらったサインは大切に書架にしまってあります。

テレビ番組でもう一題。

テレビ東京で不定期に放映されている「ハイパーハードボイルドグルメリポート」。
これが滅法面白い。

番組のディレクターが単身、世界の危険地帯や、世界で危険な仕事をしている人物のもとへ赴き、そこで生きる人々がどんな食事をしているか、そして「食」を通して彼らがどのように生きているかを綿密に取材した圧巻のドキュメントです。

さらにはテレビでは放映できなかった未公開取材をまとめた同タイトルの書籍「ハイパーハードボイルドグルメリポート」も出版され、ページをめくり始めるとあまりの面白さに時間も忘れて一気読みです。

映画評論家 町山智浩

2020.05.09

今さらと言われそうですが、映画評論家の町山智浩さんの映画解説がめっぽう面白い。

しばらく前もYouTubeで、大好きな「地獄の黙示録」を、映画館で観終わったばかりの観客を前に1時間にわたって解説していて、その造詣の深さに釘付けになったところです。
しかも質問コーナーでは観客からの数々の質問・珍問にも動じることなく、アドリブで完璧に回答。
その情報量の多さに圧倒されノックダウンされました。

週刊文春で連載中の「言霊USA」では、USAで発せられた名言・失言を原語で紹介しながら、その背景や裏側を詳細に解説。
その痛快さに、毎週が病みつきです。

ちなみに「テッド」の日本語字幕監修は彼なんですね。
15R指定のこの映画、全編を貫くお下品な翻訳に賛否はいろいろあるかとは思いますが、私は大好きです。
映画館でも、先日観直したDVDでも、思わず声を出して大笑いしてしまった映画は「テッド」が久しぶりです。

話は逸れますが、やはり町山智浩が名解説をしている北野武監督のデビュー作「その男、凶暴につき」。
お恥ずかしい話、私は知らなかったのですが、冒頭から流れる耳から離れないあのメロディは、エリック・サティの「グノシエンヌ第1番」をアレンジしたものなんですね。
映画にマッチしたあまりに素晴らしい曲だったので、まだ久石譲と組む前にこの映画音楽を担当したのは誰なんだろう、なんて、いつも思っていました。

で、その事を知ったきっかけはNHK-BS「駅ピアノ」。
妻が大好きな番組で、世界各国の駅に置かれたピアノを弾く人々を映し出すドキュメンタリーなのですが、そこでこの「グノシエンヌ」が流れたのです。

ところでこの駅ピアノ、日本でもたくさんの駅に置かれていて、今は新型コロナの影響で蓋が閉まったままですが、このピアノをさり気なく弾くことが出来たらどんなに素敵だろう、なんて夢想してしまいます。
もし弾くとしたら、坂本龍一の「DEAR LIZ」か「PAROLIBRE」がいいかな。

という訳で、いつもの通りどんどん脱線していきました。
元に戻って、町山智浩さん、知識と情報量が信用するに値する魅力あふれる映画評論家です。
どうやってここまで勉強するんだろうといつも舌を巻いています。

「ゴーン・ガール」

2020.04.21

家飲みが続く毎日。
先日の日曜日はデヴィッド・フィンチャーの「ゴーン・ガール」を観ました。

デヴィッド・フィンチャー。
類に漏れず、私もデビュー作の「エイリアン3」に失望し、しかし次作の「セブン」に狂喜乱舞したひとりです。

そして「ゴーン・ガール」。
今や監督の名前で観るひとりなのに、公開当時は映画館で見逃し、今になってようやく重い腰を上げたという体たらくです。

傑作でした。
面白かった!
☆☆☆☆☆です(5点満点)。

冒頭ではこの物語でどうやって2時間30分を持たせるのだろうと訝(いぶか)しがっていた自分を、見終わった今、恥じています。
緊迫感に満ちた独自の映像、息をもつかせぬストーリー展開、そして予想だにしなかったクライマックス。

「そう来たか」と呟いて呆然とエンドクレジットを眺めながら、スタンリー・キューブリックの「アイズ・ワイド・シャット」を思い出していました。
この二作に共通項はないのですが、さらりと重いラストシーンの衝撃が類似していて・・・。

ちなみに当時「アイズ・ワイド・シャット」を観た映画館では、ガラガラの館内で、成人映画扱いで18R指定にもかかわらず女子高生のグループがど真ん中で固唾をのんで(というのは私の想像ですが)観ていた光景が思い出されます。
トム・クルーズとニコール・キッドマン夫妻の演じる夫婦も白眉でした。

それにしてもデヴィッド・フィンチャー、やっぱりいいわぁ~。
何よりも(抽象的な言い方だけど)エッジが立った映像美がいい。
どのシーンも観終わったあとから残像として残り、心の緊張が積み重なっていく。
折り畳むようなストーリー展開と相まって、唸らずにはいられません。

という訳で往年の名作を求めて、先日もAmazonで安かったので「ダーティハリー」全5作のコンプリート版を予約してしまいました。
いつ観られるのかは定かではありませんが、とりあえず見つけたら買っておく、の姿勢です。

「怖い話を集めたら」

2020.04.11

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先週に続いて本の話です。

旧知の友人でもある女流官能小説家、深志美由紀(みゆき・みゆき)。
彼女が新境地を開いて、このたびホラー小説を出版しました。

「連鎖怪談 怖い話を集めたら」

結論から言います。
めちゃくちゃ面白くて、そして怖い。
身びいきなしです。

いわゆる視覚的な怖さではなく、心の内をじわじわと抉(えぐ)り取っていく精神的な怖さで、読者のメンタルにぐいぐいと食い込んできます。
大きなストーリーの中で一話完結の連作集となっているので、読み進めるごとに怖さがぐんぐんと加速して、その怖さがクライマックスで炸裂します。

息をもつかせぬ面白さで、私も深夜に一気読みでした。

振り返れば彼女の初期作品「はつ恋」なんかも、実はホラー色が滲み出ていて、あれから約10年、今まさに彼女の隠された才能が見事に開花した、そんな事を感じさせる快作でした。

集英社文庫なので手軽にサクサクッと買えます。
もしよろしければご一読を。

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