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飛び込み営業

2020.10.10

飛び込み営業で一度だけ大きな買い物をした事があります。
それは車です。

15年以上前のとある日、某自動車ディーラー新入社員のO(オー)君は、緊張した面持ちで、恐る恐る当社の事務所に入ってきました。
まだ契約も取れていないであろう彼は、たどたどしい口調で、しかし懸命に商品の説明を始めました。
そんなO君に惹かれたのは、不器用ながらも、ひとえに彼から滲み出る真摯さと人柄によるものでした。

ちょうど妻の小さな車を買おうとしていた時期でした。
私は彼に金額の条件を出しました。
普通でしたら飛び込んできた、その日にはあり得ません。
数日後、O君はその条件をクリアして、笑顔で当社を再訪しました。
私はその場で購入を即決しました。

そのからずっとO君は「誠心誠意」という言葉の通り、私と妻の気持ちに応えてくれました。
その姿勢は彼が転職して地元の公務員になってからも変わりませんでした。
ディーラーから足を洗ったのに「車の具合、どうですか?」と言っては、当社を訪問してくれました。

そんなある日、彼が会いに来てくれたのは、結婚の報告をするためでした。
そして彼は、披露宴で使うお酒をすべて和田龍にしたいと言ってくれました。
さらには乾杯のための、和田龍のロゴと新郎・新婦の名前が刻印された枡を出席者の数だけ用意したいとまで申し出てくれました。
私と妻は感激して、その枡は我々からのささやかな贈り物とさせて頂きました。

新婚旅行直後、O君は披露宴の写真を持って来社してくれました。
当社の清酒と枡が眩しく映えた1枚もありました。
さらにしばらくして、彼は奥様を連れてやって来ました。
彼にはもったいないくらいの(本音)、美して清楚でつつましやかな女性でした。

それからもO君は折に触れ足を運んでくれます。
時には上司や友人も一緒に連れてきてくれて、人の輪が広がっていきます。

あの日、おどおどしながら営業で飛び込んできたO君。
あの時彼を迎え入れていて良かったと、心からそう思います。
人とのご縁の素晴らしさを至るところで感じる今日この頃です。