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将棋界の衝撃

2016.12.27

プロ将棋ファンの私にとって今年のトップニュースは、何といっても「将棋ソフト不正疑惑」でした。

佐藤天彦の初名人奪取も、羽生喜治のタイトル戦連覇も、この事件の前ではいとも簡単に吹っ飛ぶほどの衝撃でした。

今やプロ棋士の頭脳を凌駕していると言ってもよい「将棋ソフト」。
その「将棋ソフト」をトップ棋士である三浦宏行九段が、対局中にたびたび離席しては、不正に使用(盗み見)していたとされるものです。
この疑惑で三浦九段は年内の出場停止処分も受けています。

この件に関して最も精度が高かったメディアは「週間文春」でした。
告発に関わった棋士名や発言内容、そして経緯に至るまで、よくぞここまで深く調べ尽くしたものだと感心しました。

これをきっかけにプロの対局では、対局中の外出禁止、タイトル戦での身体検査等、厳しいチェックが設けられるようになりました。

そしてこのたび、第三者委員会による調査結果が発表され、「三浦九段による不正行為の証拠はない」との結論が出されました。
はっきり言ってしまえば「疑わしきは罰せず」といった判定なのでしょう。
無難な着地点に収まったという違和感はどうしても残ります。

年が明けて三浦九段が対局室に戻ってきた時は、大きなニュースとして取り上げられることでしょう。
あとは三浦九段がこの重圧を跳ね返して、どれだけ素晴らしい棋譜を残せるか、汚名返上の手段はこれに尽きると思います。

羽生喜治が史上初の7大タイトル制覇を成し遂げた時、その牙城を真っ先に崩したのは、「棋聖」位を奪い取った三浦弘行その人でした。

あの時の輝きを取り戻して、ぜひ将棋界にもうひと旋風を吹かしてもらいたいものです。