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フリーな半日

2009.08.16

お盆休みのとある日、所要のため東京へ行ったのですが、夜までちょうど半日ほど時間が空きました。
たった半日といえど東京で自由な時間が取れることはそうそうないのであれこれとやりたい事が頭の中を駆け巡り、何をしようか思わず考え込んでしまいました。

その日降り立ったのは上野駅、まずは大好きな落語を観ようと向かったのは上野鈴本演芸場。
しかしいざ着いてみると、そこには「ただ今立ち見です」の無常な看板が・・・。
お盆だし、まあこれも仕方がないかと自分を納得させて、さすがに立ち見はしんどいので、残念ながら入場を断念しました。

折りしもちょうどお昼時、どこかで昼食を取ろうと思い、続いて向かったのが湯島のカレー専門店「デリー」。
ここは親しい方から教えて頂いて以来大のお気に入りで、今回は久々の訪問でした。

満席だったので待つことしばし、狭い店内のカウンターに通されて、迷う事なく頼んだのは極辛の「カシミールカレー」。
運ばれてきたのはチキンが乗ったサラサラのカレー、これをライスにかけておもむろに口に運ぶと、香辛料が混ざり合ったスパイシーな味わいと共に辛さが全身を直撃!
一気に吹き出る汗をハンカチで拭いながら、それでも次から次へと食べる手を休める事ができません。
本当の極辛、でもただ辛いだけでなく味が深いんですね。
だから飽きることがありません。
結局最後の一滴までカレーを食べ尽くして、大汗を掻きながら大満足の思いで席を立ちました。

食後の散歩がてら、真夏の太陽が照り付ける中、不忍池から上野公園をぶらぶら散策しながら辿り着いたのは東京都美術館。
ここで開催中の「トリノ・エジプト展」を観ようと思ったのですが・・・入った途端ロビーまで溢れる大行列が目に入り、思わず最後列に目を凝らすと、そこには「入場まで只今30分待ち」の看板が。
待つのは仕方がないにしても、入場してからの大混雑は「フェルメール展」でも経験済み。
こちらも断念してすたこら退散し、さてどうしよう、せっかく空いた半日なのに、上野公園の一角で悩む事しばし。

そして向かったのは新宿。
やはり寄席の思いが絶ちがたく、新宿駅からすたこら歩いて三丁目の新宿末広亭の前に立ったのは、ちょうど「夜の部」が始まったばかりの午後5時過ぎでした。
どうやらこちらはまだ座れる様子。
すぐに木戸銭を払って場内に入ると、何と客席の9割方は埋まっています。

思えばこの末広亭は学生時代よく足を運びました。
仲間と「寄席ツアー」を組んで大勢で来た時は普段は開放されていない2階に上げて頂いたり(あの時のトリは今は亡き志ん朝でした)、歩き疲れて場内の両脇にある桟敷席で足を伸ばしてゆったりと時を過ごしたり、色物のさり気ない芸の凄さに圧倒されたり(大好きな漫才あしたひろし・順子にもこの時目覚めました)・・・懐かしい思い出が満載です。

久々に訪れたこの日は、椅子席の最後列の一番端が空いていたので体を埋めて、この日出演の三遊亭一門の芸に酔いしれました。
夜の予定が入っているのでトリの小遊三までは観れませんでしたが、中入りからふたり目の三味線と踊り、桧山うめ吉(きれいな女性です)まで観て席を立って外に出ると辺りは夕やみ。
これは一杯呑むには打って付けの雰囲気と、すぐ隣の居酒屋「庄助」へと体は吸い込まれていきました。

この「庄助」も東京に住んでいた頃はよく通った一軒です。
当時はまだ改装前で、その趣きある雰囲気が好きで仲間としょっちゅう呑んだくれてました。
何年も前に改装の報を仲間から聞いてはいたのですが、新装「庄助」に訪問するのはこれが初めてでした。

入口のカウンターに席を取り、まずは生ビールで喉を潤わせてから焼きとん、モツ煮込みを頼み、さて熱燗でもと思ってメニューを見ると(私は夏でも熱燗が大好きなのです)、そこには「末廣」の文字が。
そうでした、このお店は当時から熱燗は会津の「末廣」なのでした。

普通の居酒屋でレギュラーのお酒を頼むと、メニューにはただ「酒」とだけ書いてあって銘柄が分からない事が多い中、こちらのお店はしっかりと「会津若松の酒 末廣」と記されています。
嬉しさでいっぱいになりながら頼んだ熱燗は、懐かしさやお店の空気ともあいまって本当においしく五臓六腑に染み渡り、新宿でのしばしのひとときは心地よく過ぎていったのでした。